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【絶景プロデューサー詩歩】足を運ぶ価値がある、厳選した絶景にこだわる理由

コト 2020.04.15 by G-lip E 編集部

個人がSNSを通じて情報発信することが当たり前になった現代。InstagramやYouTubeなどのツールは、いまや私たちの日常と切り離すことはできません。

SNSのタイムラインが毎秒更新され、膨大な情報が常に溢れるなかで、多くの人の共感と感動を生む「絶景」を発信し続ける女性がいます。

それが絶景プロデューサー・詩歩さん。

新卒で入社した企業の研修で立ち上げたFacebookページは、70万以上のいいね!を獲得。SNSの総フォロワー数が90万人を突破した詩歩さんの、発信力の秘密はどこにあるのでしょうか。

「自分自身が本当にいいと思った情報しか発信しない」と語ってくれた詩歩さん。その強い信念こそが多くの人の心を揺さぶり、そして誰かの背中を押すきっかけになるということを教えてくれました。

 

<インタビュアー/イノウエ>

マーケティング視点 「もう1人の自分」が情報発信のターゲット

イノウエ

今回は、絶景プロデューサーとして活動されている詩歩さんに、情報発信力についてうかがえればと思います。

詩歩さん

よろしくお願いします。

絶景プロデューサー・詩歩(しほ)1990年生まれ。新卒で入社した広告代理店の研修で、世界の絶景を紹介するFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を立ち上げ70万以上のいいね!を獲得、同タイトルで書籍化。現在はフリーランスとして、旅行商品のプロデュースや自治体へのアドバイザリー活動を行いながら、Instagram、YouTube、tiktok、noteなど複数のSNSで情報発信をしている。趣味は旅行とトレッキング、トレードマークはニット帽。

イノウエ

SNSや書籍などいくつか拝見させていただいたのですが、詩歩さんの選ばれる写真や情報では、明確なターゲットを決めてるんでしょうか?

詩歩さん

「特定の人に向けて発信している」というようなターゲット設定はしていないですね。

今の活動はFacebookからスタートしたんですが、そのころから画面の向こうに「もう1人の自分がいる」という気持ちで発信しています。

イノウエ

もう1人の自分ですか…?

詩歩さん

もう1人の自分(詩歩)だったら「行きたいと思うか」「いいね押したいと思うのか」って考えています。

だからターゲットが誰なのかって聞かれたら「自分」かもしれませんね。

イノウエ

「もう1人の自分がどう感じるか」が選ばれる写真の基準になっているんですね。

詩歩さん

そうですね。特定のペルソナを設定しているというより「自分だったらステキと思うか」どうか。自分が本当にいいと思ったことや楽しいと感じたことだけを発信していて、自分に嘘をつきたくないんです。

だからSNSでいろんな場所を紹介してますが、本当にいいと思ったこと以外は紹介していないんですね。

イノウエ

ということは、日頃から発信している場所以外にも、実はもっとたくさんの場所へ行ってるということですよね…?

詩歩さん

かなり行ってますね(笑)。

大金をかけて行った場所やタクシーで1時間以上かけて行った場所でも、「うーん、微妙だったな…」と感じたら、「今回も大赤字だ…」と思いながらも発信することはなくて、そこだけは妥協できないポイントです。

イノウエ

そこはお仕事で依頼された場合には、どうしているんでしょうか?

詩歩さん

お仕事の場合は「ここ紹介してください」と指定されることも多いんですけど、やっぱり自分が「本当に行きたいと思える場所」じゃないと嫌だなって、そこが悩みでもあるんです。

詩歩さん

だから一昨年まで、自分の取材力や渡航力をあげるために、仕事ではなく毎月海外へ行ってたんです。もちろん何かしらお仕事を絡めて行けば自腹じゃなくても行けたんですけど、自分が感動できない場所を発信したりするのを、なあなあでやるのは嫌だなと思っていたので。

イノウエ

お仕事であっても、フリーランスとして自身のマイナスブランディングになるようなことは避けたいですもんね。

詩歩さん

私としては、お金を払ってでも自分で体験したいと思ったところを紹介したい。なので仕事であってもそこに報酬は関係なく変わらないところですね。

情報発信におけるコンテンツが、自己のブランディング、働き方に影響する

詩歩さん

例えば、Instagramだと化粧品をもらって紹介する投稿の依頼が数十万円できたり、有難いことにたくさんのご依頼いただくんですよ。

お仕事をいただけるのは嬉しいんですけど、私が急にそれを紹介したら、もう1人の私が「え?」って感じるものは、どれだけお金をいただけてもやらないんです。

イノウエ

たしかに、詩歩さんがいきなりダイエットサプリの投稿をしていたら不自然かも…。

僕もある女優の方の投稿で「ん?」ってなったこともありますし。

詩歩さん

そうなんですよ。私は仕事に関連性が深いものだったり、普段から自分で使っているものとかは、お金をいただかなくても投稿してるんですね。

例えばSONYのカメラを私は使っているので、SONY製品のことは日頃から投稿したりします。なので、自分が発信して「不自然にみえるなって」もう1人の自分が感じるものはやらないようにしてるんです。

イノウエ

なるほど、その中で詩歩さんが仕事柄、意識的に行っている自分を表現することはありますか?

詩歩さん

見た目でいうと1番のブランディングはニット帽かな(笑)。

狙ったわけじゃないですけど、写真業界では「ニット帽の子だね」っていうのがアイコンになってます。もちろんメガネの人とかでもいいですし、顔を出すのであれば、何かのアイテムをアイコンにするのはいいと思いますね。

イノウエ

たしかに、詩歩さんといえばニット帽のイメージが強いですね(笑)。

詩歩さん

それ以外だと、『絶景プロデューサー』を名乗る人は私だけ。でもカメラマンやネイチャーフォトグラファーの方はたくさんいて、日本はもちろん海外にはもっとたくさんいます。

その中で勝負するのはすごく大変なことで、自分がオンリーワンになる為にはどうしたかいいかと考えて、何かを掛け算することがいいと思ったんです。

イノウエ

何かを掛け算ですか…?

詩歩さん

私は『写真×旅×絶景』っていうところでオンリーワンを見つけることができたので、今はピンポイントのお仕事をいただけてます。

なので自分がオンリーワンになれるものや肩書きを見つけることは、ブランディングとしてはいいのかなと思います。ただそこを狭くしすぎると、それ以外の仕事がしづらくなるので見極めないといけないですけど(笑)。

イノウエ

やっぱりそこが唯一無二というところですよね。

詩歩さん

絶景プロデューサーを名乗って仕事をしている限りは、あらゆることにチャレンジして最前線でいたいなと思いますね。

イノウエ

詩歩さんの行っているチャレンジというのは、複数のSNSだったりYouTubeでの配信を行っていることも含まれますか?

詩歩さん

私は個人で情報発信を行っていると同時に、自治体さんなどにコンサル的なお仕事もしているので、次に来るメディアの先駆者といえるように、知見を持つ意味も込めてやってます。

イノウエ

さまざまなメディアに触れてないと、そもそも何が流行っていて、どんなメディアの効果が高いのかわからないですもんね。

詩歩さん

やっぱりメディアによってトレンドもあって、見ているユーザー層も違い、終わりに近づいているメディアもあります。

だから今年はYouTubeをはじめて、去年はTikTok、その前はnoteという感じで、毎年違う媒体に取り組むように1年間の目標を立てたりしてますね。

イノウエ

自分で目標を立てて、複数のSNSやメディアを並行して運用してるんですね。

大手企業では、SNSの企業アカウントの運用を専任でされてたりするので、それだけ複数やっていると大変そうですね…。

詩歩さん

ネットやメディアは私が好きなことだから、そこまで「めちゃくちゃ苦労して~」ってわけじゃないですけど、やっぱり大変。

それでも私の投稿を見てくれる方で、自分はそこに行けないけど”私の投稿から絶景の疑似体験”をしている人が多かったり、そういった声を聞くのが嬉しいので、続けられますよね。

絶景が誰かのきっかけに 写真から伝える世界観

イノウエ

絶景の擬似体験ですか…?

詩歩さんが投稿している絶景の中で、もし共通しているポイントがあれば気になります!

詩歩さん

私が絶景を選ぶときの基準は2つあるんですけど、1つは目で見たときに美しいこと、もう1つは、そこに”ストーリーがある”こと。

絶景が全ての共通項であって、そこにあるストーリーは同じではないほうが面白いと思うんです。

イノウエ

絶景が共通する点で、そこに同様のストーリーを見つけることもなく、ただ絶景を発信するわけでもないと?

詩歩さん

そうですね。その場所がオンリーワンで、わざわざ足を運ぶ理由があることが素敵だなと思います。

なので何かストーリーがあることを共通させる理由がなくて、むしろ違うほうがいいと思っています。

詩歩さん

やっぱり私はこういう仕事なので、あちこち行けますけど、そうじゃない人の方が多いと思います。

その代わりに私が見て感じたことを伝えることで、少しでも”行った雰囲気”を楽しんでもらいたいなと思うんです。

イノウエ

なるほど。なぜ人はいい景色を求めてるのかな?ってずっと疑問だったんです。

でも絶景写真を見て、そこへ”行った気持ち”になっているんですね。

詩歩さん

やっぱり「絶景」って聞くと、行くまでのハードルが高いと感じる方も多いんですよね。自分の中で「行けない」と思い込んでしまっているんです。

イノウエ

どういうことでしょうか?

詩歩さん

時間がかかる、お金がかかる、大変そうみたいな感じて、自分の中でハードルを上げてしまっている方が多いように感じます。

日本はパスポートの所持率が25%で先進国でも最低といわれるのも、行けないと思い込んでしまっている人が多いからだと思うんです。

イノウエ

なるほど…。

詩歩さん

日本は地球上でもすごく小さい面積しかない。だから日本でも海外でもどっちでもいいんですけど、いろいろな場所へ足を運ぶことで気付きや発見がたくさんあるんです。

例えばイタリアに行ったら紀元前の遺跡が眠ってたり、古いものを大切に使ってる文化も分かるので、日本に帰ってきて、日本がちょっと異常だなと気付けることがたくさんあると思います。

イノウエ

詩歩さんが発信する絶景をきっかけに、もっとたくさんの世界を知って欲しいという想いがあるんですね。

詩歩さん

そういうことを発見するのが私はすごい好きで、同じように思っている人の楽しいきっかけが「絶景」であったらいいなと思いますね。

楽しいだけじゃない、情報発信を仕事にすることの難しさ

イノウエ

情報発信していると投稿に対して変なメッセージがくることもあると思うのですが…。

詩歩さん

そうですね(笑)。

例えばInstagramで「京都に移住します」って投稿したときに、知らない人からDMで「京都はすごく今でも混んでるので、これ以上京都のこと発信しないでください」ってきたりしました…。

イノウエ

おお、なかなか厳しい…。

詩歩さん

だから、自分が発信したことが見てくれた方みんなに理解されるのは無理だなと思います。

SNSの中では、精神衛生上この人とは絡みたくないなと思ったらブロックして削除するようにしました…。

 

詩歩さん

そうやってブロックしても、また他のアカウントからきたりするから、またブロックして削除。よっぽど私のこと見てるんだなって(笑)。

イノウエ

好きなんでしょって思いますね(笑)。

でもそこのコミュニケーションの取り方が、情報発信の難しいところのような気がします。

詩歩さん

あとは旅行が、インフルエンサーの立場では難しいなって思うんですよ。無料で〇〇行く代わりにバーターで発信してくださいねというお仕事も多くて、結構みんな受けちゃうんです。

イノウエ

生業としている以上、楽しいだけではなく、稼がないと生活できないですよね。

詩歩さん

旅行を仕事にしていると、お金をいただいて取材に行って発信するってしないと稼げないんですよね。自分としてはそこでちゃんと稼げるように、お金を払ってでも取材に行ってもらいたいと思ってもらえるように、自分の価値を高めて、将来的に自分の首を締めることがないような仕事をしてます。

イノウエ

なるほど、プライベートの旅行なのか、仕事での旅行なのか、頭の中が複雑になってきました…。

詩歩さん

私は案件に関係なく自分でお金払って取材に行くことがほとんどなんですけど、友人と行くプライベートの旅行でさえも、将来仕事に繋がりそうな場所へ行くことが多いんですよね。

イノウエ

それでは、心からシンプルに楽しめないんじゃないですか…?

詩歩さん

そう、本当だったらリラックスしたいんですけど「ここも撮っておこうかな」とか「光がいい時間はいつかな」とか考えちゃって。宿で料理が出てきて、本音は冷めないうちに食べたいですけど「ちょっと写真も、動画も撮って…」とか素材を撮影しているので、毎回冷めてしまうんですね…。

イノウエ

じゃあ、今後詩歩さんがやりたいことといえば、仕事抜きで大好きな旅行をシンプルに楽しみたいですか?

詩歩さん

仕事とか抜きに、リラックスして楽しめる旅行をまたしたいなと思います(笑)。

まとめ

SNSでの情報発信は自己表現のひとつであり、それが仕事の幅を広げるきっかけにもなる時代です。Facebook、Instagram、Twitter、そしてYouTubeやTikTokなどプラットフォームは時代共に変化しますが、そこには変わらない何かがあるのかもしれません。

 

1枚の写真や添えられた文章にも発信者の想いが宿ります。価値ある情報発信をするためには自分なりのこだわりを貫き、妥協しないことが大切だと教えてくれた詩歩さん。
自分にウソをつかずに発信していくことは、それを見てくれる人に対しても真摯でいるための秘訣かもしれません。

 

ときには心ないメッセージに落ち込むこともあるSNSの世界。自分にとって本当に大切なものが何かを見極めることも、発信力を高める重要なポイントなのでしょう。

 

次回は絶景プロデューサー・詩歩さんの、フリーランスとしての働き方や価値観を探っていきます。

 

<ライティング/Nao @nao8110_writer
<編集/イノウエ>
<撮影/刀根康英>

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