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K-1王者武尊 ビジネスとしてのK-1、チャンピオンの先にある今後#03

ヒト 2019.07.10 by G-lip E 編集部

「獲るよりも防衛する方が難しい」と一般的には言われているチャンピオンベルトを守り続けるということは、並大抵のストレスではないだろう、と想像してしまいます。

しかし、武尊選手が目指している頂上とは、その程度の高みではなく、「まだまだ発展途上の段階」であり「チャンピオンになることが最終目的ではない」と断言します。

今回は「永遠のチャレンジャー武尊」がK-1に賭ける夢、さらには「ビジネスとしてのK-1」について、たっぷり語っていただきました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

「K-1をもっとみんなに知ってもらうこと」が自分にとってのビジネス

イノウエ

スーパースターになるという目標があるなかで、三階級制覇はどのくらいのステップなんでしょうか?

武尊さん

まず、アスリートである以上、その分野でトップを目指すのは当たり前だと思っています。
K-1だったら世界チャンピオン、サッカーならワールドカップ優勝とか。
「スーパースター」の定義って色々あると思うんですけど、僕が目指す「スーパースター」は、誰もが知っていて、どんなことでも出来てしまうような人なんです。

イノウエ

そうなると、チャンピオンというのもまだまだ最初のステップになりますね。

武尊さん

僕は「ただの一番強い選手」で終わりたくないですよ。
チャンピオンになることが目標ではなくて、チャンピオンになるのはもう当たり前だと思っています。
“格闘技”という枠を超えて、さまざまな分野で活躍できる「全階級制覇」を目指すスーパースターになりたいですね。

本名・世川 武尊(せがわ たける)
1991年鳥取県米子市出身。高校を3ヶ月で退学して17歳で単身タイに渡航、武者修行の日々を過ごした後帰国、2010年に上京し翌年2011年にプロデビュー、戦歴は38戦37勝1敗。
K-1史上初の3階級制覇を成し遂げ、アグレッシブに攻め続けるファイトスタイルが持ち味で「ナチュラル・ボーン・クラッシャー」の異名を馳せる。

イノウエ

その“スーパースターになる”という思いが芽生えたきっかけはあるんですか?

武尊さん

僕が小さいころ、K-1は物凄い人気だったんですよ。
有名選手はさまざまなCMで見かけるし、試合もゴールデンタイムで放送されていて、それを見ていた僕は「チャンピオンになったら、スーパースターになれるんだ」と思っていました。

イノウエ

それで実際にチャンピオンになる、まさに夢を叶えたわけですね。

武尊さん

そうやって、21歳のときに、はじめてチャンピオンベルトを獲ったんですけど、 自分の環境はなにも変化がなかったんです。
K-1や格闘技の人気も下火になって、テレビ放送もなくなっていた時期だったので、選手たちが命がけで試合をやっていることすら「知られないまま終わってしまうんじゃないか」という危機感を感じましたし、どうしてこんなにも見てもらえないんだろうって、すごく悩んでいました。

イノウエ

格闘技に限らず、日本のスポーツはテレビ放送が少なくなる傾向が強いですね。

武尊さん

そうなんです。ずっとテレビ放送されているのは相撲と野球くらい。
でも、悩んでいても何も変わらないので行動することにしたんです。
自分で芸能事務所などをネットで調べて、片っ端から電話してオーディションも受けに行ったり。
まず皆さんの目に触れなければ始まらないと思っていました。

イノウエ

すごい信念と行動力ですね。
たとえば、プロサッカー選手の本田圭佑さんはワールドワイドに活躍されており、ベンチャー企業に投資したりとビジネス面でも活躍しています。
スーパースターともいえる本田さんですが、武尊さんが目指すスーパースター像に近いですか?

武尊さん

企業投資やベンチャー企業を応援するとか、ビジネス面も取り組んでみたいと思いますよ。
でも今すぐという感じではないですね。
まだ自分がやらなきゃいけないことはたくさん残っていますし、僕のモチベーションは自分が小さいころから大好きで続けてきた格闘技を、「たくさんの人たちに観てもらえるのが嬉しい」という、至ってシンプルなものなんです。

格闘技も「夢を与える」スポーツでなければならない

イノウエ

ビジネスに関する話題が出てきたので、色々な人が気になっている部分の質問ですが、仕事や職業として考えたときに 格闘技は儲かる仕事ですか?

武尊さん

お金が絡むことってあんまり好きじゃないんですよ(笑)
ファイトマネーの交渉も興味がないくらいですから。
でも“人に夢を与える”という意味では、儲かる職業にしたいですね。
僕がK-1を始めたころは、格闘技が下火になってしまっていた時期で、テレビ放送もない、会場も小さい、チャンピオンになってもバイトしなきゃ食べていけない、そんな状態でしたから、夢を与えられないですよね(笑)

イノウエ

チャンピオンがバイトしなきゃ生活出来ないというのは健全じゃないかもしれませんね。

武尊さん

僕もベルトを獲った後でも、まだバイトしてましたよ(笑)
だからこそ変えたいという思いは強くあります。
格闘技をそういう業界にしたくないし、もう一度、K-1をゴールデンタイムの生放送で届けたいです。

イノウエ

今ではYouTubeやabemaTV、NetflixやAmazonプライムなどのVODも普及していますね。

武尊さん

そうですね。
僕も出演させていただいたりしていますが、やっぱりLIVEで視聴者の皆さんにお届けできれば、臨場感も変わってくると考えていますね。

イノウエ

K-1をみんなにもっと知ってもらうために、なにかチャレンジしてみたいことはありますか?

武尊さん

試合をすぐそばで観てもらうだけじゃなく、これからは積極的にファンの皆さんと実際に会って、コミュニケーションできる場をいっぱいつくっていきたいと考えてますよ。

イノウエ

会いに行けるアイドルみたいな感じですか?

武尊さん

そうですね(笑)
大会で地方に行ったときには、試合以外にもイベントを開催したりして、ミットを打っている姿を観てもらったり、試合の解説を聞いてもらったり。
今スタッフといろんなアイデアを出し合って、頻繁に企画ミーティングをしています。

イノウエ

放送メディアではVODの発展が目覚ましいですが、スポーツ業界にも新たな”e-Sport”というジャンルが生まれました。
格闘技やK-1の発展に利用できる可能性はありますか?

武尊さん

e-Sportを通じてK-1の認知度を上げるというのは良いと思いますね。
興味を持ってもらうきっかけとしてゲームはとても良いと思いますよ。
ゲーム面白いですからね(笑)
そこから、「生の試合が観たい」「もっと放送して欲しい」ってたくさんの人に思ってもらえたらe-Sportもありだと思いますよ。

トップアスリートから見た「引き際」

イノウエ

チャンピオンには少々聞きづらいことなんですが、格闘家の選手寿命は短いですよね?

武尊さん

そうですね(笑)
とくにK-1ファイターは瞬発競技なので選手寿命は短いと考えていますよ。
30歳でトップの座にいることすら至難の競技ですから。

イノウエ

なるほど。他の競技と違って、試合毎に物理的にダメージがあって怪我もしますよね。
やはり引き際は意識せざるを得ないですか?

武尊さん

瞬発力と反射力が落ちたら、辞めざるを得ないですよね。
ただ、僕の場合は、体力的な衰えというよりメンタルな部分の衰えを自覚した瞬間が引き際だと思っています。

イノウエ

「引き際」はビジネスシーンでも考える人が多いのではないでしょうか。
『メンタルな部分の衰え』は誰しもが感じる時があると思います。武尊さんの場合はどんな時になりそうですか?

武尊さん

試合を楽しめなくなった時が引き際だと思います。
そして、おそらく試合を楽しめない感覚は“じわじわ”ではなく、 納得できない試合をしてしまった直後、すぐにわかると思いますね。

イノウエ

今はまだまだ試合を楽しめているということですね。
その「引き際」がまだしばらく来ないことを願っていますが、それまでに果たしたいことはありますか?

武尊さん

世界中が注目するほどの大きなスタジアムで試合をやって、K-1を世界中の視聴者の皆さんにお届けできるようにしたいですね。
もし引退したとしても、格闘技が好きで続けてきたので、なんらかのかたちで格闘技とは接していたいなと思っています。

一流アスリートはゲン担ぎがお好き?

イノウエ

チャンピオンであるために、さまざまな制約を課していると思いますが、武尊さんがルーティン化していることはありますか?

武尊さん

身体のコンディションを保つことが基本なので、食事はかなりルール化しています。
一番気にしているのは体を冷やさないことなので、冷たいものは一切口にしないですね。
トレーニング中の水分補給も必ず常温ですし、アイスもこの数年口にしていないんですよ。
小麦粉も摂らないようにしてて、パンやパスタも食べないですし、 グルテンフリーを徹底しています。グルテンは米よりも食欲を増やしてしまうのでまず食べないですね。

イノウエ

やはり食事が一番の基礎なんですね。
アスリートは試合前のルーティンというかゲン担ぎも決めている人が多いですが、武尊さんも何かありますか?

武尊さん

いっぱいありすぎて、全部挙げるのは厳しいですね(笑)
一つ挙げるなら、試合の前には、 必ずウナギの肝を食べるとかですね。
デビュー戦でウナギの肝を食べてKO勝ちして以来ずっと欠かしていないんです。

イノウエ

完璧なゲン担ぎですね(笑)
身に付けるモノとかもありますか?

武尊さん

試合でもプライベートでも青のアイテムは選ばないですね。
青コーナーは挑戦者、赤コーナーがチャンピオンコーナーなんで青と赤なら迷わず赤を選ぶようにしてます。
アクセサリーでも金と銀なら迷わず“金”を選びます。金は1位ですけど銀は2位ですからね、意外と同じ理由でゴールドのアクセサリーを身に付けるアスリートは多いと思いますよ。

イノウエ

最後に、すごいこだわりを知れて楽しかったです!
本日はどうもありがとうございました。これからも武尊さんのご健闘を陰ながら応援しております。

武尊さん

ありがとうございます。頑張ります!

まとめ

自分の目指す姿を叶えるべく、さまざまな活動を積極的に行ってきた武尊選手の考えを伺うことができました。

これから自分がどうなりたいか?想像することによって、今やるべき行動が見えてくるのではないでしょうか?

今回は3本立ての企画となり、三階級制覇王者武尊選手の「素」を探ることができました。
チャンピオンになっただけではとどまることを知らない武尊選手に今後も注目です!

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