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【オーダースーツの魅力】干場 義雅に聞く、スーツを通じ、自分を一番輝かせる為に必要なこと

モノ 2020.02.17 by G-lip E 編集部

2018年に話題になったZOZOスーツをはじめ、アパレル業界ではオーダーメイドスーツの新ブランド設立など、大手メーカーの参入が相次いています。ワイシャツ、ネクタイといったビジネス用品市場が縮小傾向にあるなか、オーダーメイドスーツはIT技術の革新もあり、従来よりも身近なったファッションアイテムとして注目されています。

オーダーメイドスーツには既製品と比べてどのような魅力があるのでしょうか。
今回は、ファッションメディア『FORZA STYLE』編集長の干場義雅さんに、失敗しないオーダーメイドスーツの採寸の仕方や、スーツをよりカッコよく、お洒落に着こなすために必要なことをお伺いしました!

これからオーダーメイドスーツをつくろうと考えている方、また、オーダー注文したもののスーツの出来に納得いかず違和感を覚えている方、納得できるオーダーメイドスーツの作り方を知るチャンスです。

男はなぜオーダーメイドスーツにこだわるべきなのか

イノウエ

干場さん、今回は「男のスーツ」について、さまざまお伺いできればと思いまして。

干場さん

はい、よろしくお願いします。

イノウエ

早速ですが、干場さんが成人してから、ご自身でオーダースーツをはじめてつくられたきっかけは、何だったんでしょうか。

干場さん

スーツ自体はいくつも買ったりしていましたし、3歳の頃からスーツは作ってもらっていましたが、はじめて自分のお金でオーダーメイドスーツを作ったのは27歳くらいのとき、雑誌の企画の一貫で作ったオーダースーツで、価格は30万くらいだったと思います。自分のセンスはスーツをオーダーする時に、雑誌に全て出ちゃいますから、襟、ボタン、肩幅、裾、すべてにこだわりぬいて作りました。

本名:干場義雅(ほしば よしまさ)東京で3代続くテーラーの家に生まれる。現在はWebメディア『FORZA STYLE』編集長/ファッションディレクター『MA-1』、『モノ・マガジン』などの編集を経て『LEON』の創刊に参画。

その後『OCEANS』を創刊し副編集長及びクリエイティブディレクターを兼任。2010年にフリーランスのファッションディレクターとして独立し、現在は商品開発をはじめ、雑誌、テレビ、ラジオ、Webなどメディアの枠を越えて活躍する。

イノウエ

30万…サラリーマンの月収くらいですね…。

細部までこだわって作ったスーツに、袖を通した時のことは覚えてますか?

干場さん

もちろん、嬉しかったですよ!あとは、 すごくカッコいいスーツだなと思いました。

でも、スーツは作った瞬間がカッコいいわけじゃないんですよ。着れば着るほど自分の体型に馴染んできますから、10年20年経ってその本当の良さが分かるんです。

イノウエ

どういうことでしょうか?

干場さん

ジーンズがそうでしょう?

長く座っていれば膝がでるし、ポケットにマルボロの箱を入れていれば跡がつくように、スーツでも身体にそって生地が動くことで自分の体型にあったシルエットになっていきます。

ちょうどYouTubeの企画で、20年着たスーツを新しくするという撮影をやってたんですけど、まさにそれですよね。どんどんよくなっていくんです。

イノウエ

自分だけのオーダースーツを作る理由は、そのあたりにありそうですね。

干場さん

スーツにも一応トレンドがありますが、僕はトレンドを追わないですし、あんまり突拍子なものも好きじゃないので、ベーシックなスーツを好んでつくります。

だから黄色いスーツとか絶対着ないんですが。外国の方で黄色の目立つ色のスーツ着てもの凄くカッコいい方はいっぱいいますからね。

でも僕はその中で、皆さんと同じようなビジネスマンの中に溶け込みたいんです。

目立ちたいと思ったことがない…

イノウエ

スーツのトレンドを追わない理由というのはなぜでしょうか。

干場さん

トレンドはあるものの、スーツのスタイルは、ある程度グローバルスタンダートで決まってます。

でも僕は、グローバルスタンダートを目指すわけでもなくて、自分自身が一番カッコよく見えるスーツだけを着るようにしてます。

そのために、肩幅を5mm出したてみたり、何度も生地の修正を行って、自分のサイズに研ぎ澄ましていくんです。

イノウエ

自分が1番似合うように、何度も作り替えていくんですね。

干場さん

例えば、買ってきたスーツの袖が少し長かったりすると、ダブダブでカッコよく見えないですよね。

自分にぴったり合っていたら、手も足も長く見えますし。自分の体に合ったサイズって必ずあるんですよ。なので、これからスーツを作ろうとしている方に僕から伝えたいことは、ベーシックなカラーで、自分を1番輝かせるサイズを選ぶことです。

イノウエ

なるほど…

干場さん

サイズには、顔の大きさも関係していて、もうちょっと肩幅があるものを着ると、もっとカッコよく見えると思いますよ。

イノウエ

今のは僕へのアドバイスでしょうか…

干場さん

そうです(笑)。僕も自分の顔幅わかってるんですけど。

男性だと顔幅の3倍くらいを目安の肩幅とすると、自然と顔が小さく見えるんです。

イノウエ

肩幅のサイズ感を考えると、既製品のスーツでは再現が難しいですね…。

干場さん

そう、なので客観的な視点を持った的確なアドバイスと、体型を美しく見せるデザインに仕立て上げてくれる、腕の良いテーラーさん(ブランド)を探して、商品選びからフィッティングまで頼んでみてください。

それに、スーツだけに限らず、メガネやワイシャツでも同じで、自分に似合うサイズを作ることは、自分自身の体型を知る良いきっかけになると思います。

イノウエ

信頼できる店員さんを探すのが大切ということですね。

でも客観的視点と、自分の好みを合わせて、着こなせるようになるんでしょうか。

干場さん

僕も自分のスタイルが定まるまでは、着なくなってしまった洋服がたくさんあります。

色々と試していると失敗も成功も必ずしますよ。なので「コレ!」というスタイルが見つかるまではある程度時間がかかるものなんです。

今まででいちばん高額だったオーダーメイドスーツは『Kiton(キートン)』のスーツ。100万越えだそうです。

イノウエ

履き心地の良い靴に出会うようなイメージですね(笑)。

オーダースーツではなく既製のスーツを購入する場合、どうすれば自分に体型に合わせられるんでしょうか。

干場さん

既存のスーツを購入する場合は、自分のサイズに近いもの買って少しずつ修正してもらうと良いですよ。サイズの小さいものを大きくするのは難しいので、やや大きめのものを購入して、修正していくんです。

賢いお洒落には、明確な価値基準が必要である

イノウエ

スーツ姿をよく魅せようと、色々やってみるんですが、結果的に浮いてしまうことがあったり、干場さんの場合、やりすぎないお洒落の目安というのはありますか?

干場さん

まずは“失礼のないように”が最低限のマナーだと思います。

僕の場合は人前に出ることもあるので、特に顔と手先には気を付けていますが、普段から全方位に気を使っていて。爪を切る、肌荒れをケアするといったような、ごく当たり前のことをコツコツやることです。

イノウエ

失礼がないようにするという気遣いも、さりげないですね。

干場さん

女性はメイクやネイルなどで隠せますが、男性は首から上、手先などは露出している部分でいわば裸じゃないですか。ということは裸で歩いているのと同じなんですよ。

唇が荒れていたり、汚い爪だったり、鼻毛がでてたりとか、女性は気になると思いません?

イノウエ

たしかに…気になります。

干場さん

いくら高価なスーツを着ていても、白いシャツがヨレヨレでは台無しですし、例え高級シャツを買ったとしても、着たきりだったら気持ち悪い、パリッとした真っ白いシャツを毎日着るのは身だしなみのうち。

大切なのは、めりはり なんですよ。ここにはお金を使うけど、ここには使わないという基準はあった方が良いですね。

イノウエ

その基準というのはなんですか?

干場さん

長く保つどうか。わかりやすいところだと消耗品で。例えば、ジュエリーなんて半永久的に保ちますよね。

イノウエ

わかりやすい基準ですね。

干場さん

このシグネットリングは自分の子供とかね、サイズが合えば孫にあげることもできるし、溶かしてまた違うものを作ることだってできる。価値基準は、そのモノが長く使えるかどうかじゃないですか。

イノウエ

これまで1度しか着ることががなかったスーツ、洋服はないんですか?

干場さん

今は、自分のスタイルが形成できてしまったので、ほとんど無いです。

イノウエ

つまり、自分のスタイルができるまでは、いろいろ試してきたということでしょうか。

干場さん

そうですね。あのタモリさんも、今はあのサングラスのイメージですけど、昔はティアドロップしてましたし、今のサングラスになるまで、相当な時間かかっていると思います。

だから、自分に似合うモノを探すということが、自分をカッコよく魅せる1番の近道なんです。

高価なモノを身につければ良いということでもない…

干場さん

ファッショナブルなもの、奇抜なもの、高価なものを身に着ければ、お洒落というわけではないんです。見えないところ、見えるところを含めて、手入れが行き届いていればスーツ姿も自然と際立ってくると思います。

スーツ姿のギャップとは?自分の魅力を最大限演出する

イノウエ

仕事帰りに女性とデートの約束がある時、僕はいつもと違う自分をスーツ状態で魅せようと意識するんですが、何度やってもうまくできなくて…(笑)。

干場さん

小物で差をつけるのはどうでしょう?

いま僕が指に嵌めているシグネットリングは、古代ローマ時代に使われていた歴史ある男性用アクセサリーです。

イノウエ

センターの部分にイニシャルが彫ってありますね?

干場さん

ええ、自分のイニシャルをオーダーで刻印してもらったもので。昔は紋章をもつ貴族のみが身につけることが許された、封蝋する際の刻印(判子)としても用いられていたリングです。

歴史も古く、外したり嵌めなおしたりしなくても、つけるだけでスーツ姿に風格がでますから、僕はビジネスとプライベートの両方で利用してます。

イノウエ

これならシンプルなので、スーツにも風格が出そうですね。

もしアクセサリーを身に着けるのが苦手だったらどうすればいいですか?

干場さん

オンとオフの切り替えをどう演出するか?であれば、仕事中には見せないだろう意外な素顔をどれだけ上手く見せられるかだと思います。

イノウエ

どういうことですか?

干場さん

眼鏡をかけていたとしますよね。BARで飲みながら割と真剣な話をしていて…。

ふと、ネクタイを緩めて眼鏡を置いて「もう一杯飲もうか…」と、急に強いお酒を頼みはじめたら女性はドキッとすると思いません?

イノウエ

あえて、ギャップを演出するということでしょうか。

干場さん

普段はきっちりと制服を着た、警察官やパイロットのような堅いイメージのある職業の方が、もし制服を脱いで私服姿になったらどうなるのだろうと、つい想像してしまうことってありますよね?

スーツは男の制服の面もありますから、仕事モードから「眼鏡を置く」「ネクタイを緩める」などの何気ない所作ひとつで、オフ(プライベート)をうまく匂わせることができます。

イノウエ

なるほど… 。

普段のスーツをきっちり着こなしていれば、ギャップを演出することができそうですね。

干場さん

そういう時のために、眼鏡や時計などは、よく手入れが行き届いたものを身に着けておくと良いですね。それに、人はミステリアスな部分を持っていた方が良いですよ。

イノウエ

どういうことですか?

干場さん

例えば、どんなパンツ履いてますか?という質問に対して、僕がもし「ヒョウ柄」って答えたら、僕のイメージが「ヒョウ柄のパンツを履く人」と定着してしまうんですね。

イノウエ

相手の想像力を掻き立てるように、気になるポイントをあえて作るということでしょうか。

干場さん

ミステリアスを作る。なんでも話しちゃうと面白くないんですよ。

だからよく、僕のInstagramを見てる方から「プライベート見えませんね」っていわれるんですけど、あえて出してない。そうすることによって、自分のことをもっと気になってもらえるんですよ。

イノウエ

自分というキャラクターを作ることで、気になる女性に対して、普段と違う一面を魅せるきっかけに、変えることができるんですね。

まとめ

オーダーメイドスーツをつくる。それはプロの職人さんに丁寧に採寸してもらうことで、自分のスタイルを客観的に知ることができる良い機会。自分自身に向き合あえる時間でもあります。
しかし手間と時間をかけて作ったスーツも、だらしがなく着れば良い印象をもたれません。「失礼のないように身だしなみを整えることこそ、お洒落の基本」という干場さんのお話しに、お洒落は自分のためだけでなく、一緒にいる人のためでもあると改めて考えさせられました。
干場さんが日ごろから心がけている、これらファションの着こなしやマナーなどのテクニックはどのように身に着けてこられたのでしょうか。次回は干場さんのキャリアや哲学などを探っていきます!

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