K-1王者武尊 三階級制覇の先にある「ライバル論」と「憧れの人」#02
ヒト 2019.07.10 by G-lip E 編集部
拳を骨折しても、敵への突進をやめない超攻撃型スタイルが持ち味のK-1史上初3階級制覇王者・武尊選手。
普段は優しくて人懐っこい笑顔でファンサービスに励み、女性や子どもファンにも高い人気を誇りますが、いったんリングに上がれば別人に。
「軽量級はKOが少ないから盛り上がらない」という従来のK-1イメージを覆すため、若くして「ナチュラル・ボーン・クラッシャー」へと変貌。
そんな「生まれながらの破壊者」が、今回はその“ライバル”と“憧れの人”について語ってくれました。
〈インタビュアー:イノウエ〉
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イノウエ
普通の人生をすごしていれば、他人を殴るという経験を一度もしない人が大半だと思うのですが、そんな中で、拳を交える時に感じるものはどういうものなのでしょう?
武尊さん
そこでいうと、人を殴るのが好きというわけじゃないんですよ、嫌いでもないんですけど(笑)
格闘技という意味で、僕が考える“殴り合う”という行為は、寸時を惜しまず練習したり、つらい減量も乗り越え、数ヶ月かけて、死ぬ気で準備をしてきたプロフェッショナルの二人が、同じ想いでリングに上がる”同志”だと思っています。
だから、なかなか上手には言えないんですけど、リング上では、対話こそしていないものの、なんとなくわかり合えているような気分になってくるんですよね。
仲が良い友だちと語り合うみたいなイメージに似ているのかもしれません。
イノウエ
なるほど、リング上では仲間みたいな関係になるんですね。
そうしたら、一度対戦した相手と親友になることもあるんですか?
武尊さん
それはありませんね。
リングで戦っている瞬間だけが“同志”であり、拳で語り合えるわけです。
なので、これまでの対戦相手も、プライベートで仲が良い選手は一人もいませんよ。
イノウエ
試合後、一緒に食事など行ったりすることもないんですか?
武尊さん
まず、ないですね。
イノウエ
仲良くなって、試合後、焼肉食べに行くみたいなのを想像していました(笑)
武尊さん
あくまで敵なので、絶対にありえないです。
もしかしたら引退した後に仲良くもなれるかもしれませんけど、現役を続けているかぎりは、あくまでお互いファイターなので。
また対戦する可能性だってあり得るわけなんですよね。
そして、それくらい真剣に相手と向き合わなければ、観客の皆さんのハートを揺さぶるような試合はできないと思っています。
やってみせる、体験させることの大切さ
イノウエ
現役選手でもある武尊さんは後輩への指導についても考えなければならないと思うのですが、育成する上で大切にしていることはありますか?
武尊さん
僕が口下手なのもありますが、格闘技って、テクニックやメンタルなど含めて、言葉で伝えるのは相当むずかしいんですよ。
ボディーは当たりどころが良いとダウンを奪えるけど、打たれ続けると相当なダメージが溜まる。その有効なボディーの打ち方を口で伝えるにしても、伝え方と受け取り方で意味が変わる場合があります。
僕は小さい頃から、自分の身体で何度も体感したので「どこに当たれば効くのか」わかるようになりました。そうすると「ここを打たれなければ良い」ということもわかりますよね。
あとはとりあえずオレをじっくりと観察しろと。自分の背中で戦っている姿を見て成長を促すみたいな指導しか僕はできません。
古いやり方かもしれませんが(笑)
イノウエ
企業勤めでも、マネジメントに悩む人が多いので、「やってみせる」は良いかもしれませんね!
いま、武尊さんがライバルと見ている選手はいますか?
武尊さん
ライバルですか?メディアがライバルと勝手に書き立てている選手はいますが、僕は「そんなヤツらと一緒にするなよ」くらいに考えています。
僕が目指しているのはチャンピオンではなくて、スターなので、強さだけで比べられるのは嫌なんですよね。
格闘技の部分以外でも、マインドを含めてリスペクトを感じることができる相手が出てこないと、ライバルとは呼べないと思っています。
気持ちや想いを表現するための「言葉」の表現力
イノウエ
K-1以外でもかまいません。スポーツ界全体を通じて、リスペクトできるアスリートはいますか?
武尊さん
いろんな人がいますけど、「この人」っていうのはいないですね。
例えば、スポーツ選手だったら『クリスティアーノ・ロナウド』。
見た目も格好良くて、サッカーも超一流でちゃんと結果を残していて、あとテレビや広告にも出ていますね。
世界中が『クリスティアーノ・ロナウド』って名前と顔を知っています。
アーティストだと『マイケル・ジャクソン』、彼はまぎれもない音楽界のスーパースター。芸術性の高さ、他のアーティストやダンサーに与えた影響の大きさは、まさにキング・オブ・ポップ。
僕は、ああいう存在になりたいと思っています。
イノウエ
確かに、今あがった人たちは紛れもないスーパースターですね。
では、実際にあってみたい憧れの人はいますか?
武尊さん
スポーツ選手じゃないんですけど、ミスチルの桜井(和寿)さんと一度、お話してみたいですね。
イノウエ
桜井さんのどういったところが憧れなんですか?
武尊さん
桜井さんの表現する言葉が素晴らしいと思うんですよ。
僕は、言葉を使って人の心に訴えかける行為が苦手で、いつも「どうやったら、大勢の人に気持ちを伝えることができるだろう?」
と、悩んでいます。
なので、曲の歌詞を聴けば聴くほど感動してしまいますよ(笑)
過去に、一度だけミスチルのLIVEに行ったことがあるんですけど、歌詞だけじゃなくMCの言葉が心に染みてきたんです。
イノウエ
その刺激と影響って、武尊さんの中ではどのような形で活かされているのですか?
武尊さん
たとえば、試合に勝った直後はマイクパフォーマンスがあります。
僕は本来、自分がパッと思い浮かんだことをそのままストレートにしゃべることしかできないタイプなんですけど、それをもっと細かく、わかりやすく正確に伝える言葉を使いこなすことができたら、より多くの人に感動してもらえる、もっとパワーを与えることができるスターになれるのではないかと思っています。
なので最近は、試合後のマイクパフォーマンスのセリフをONE OK ROCKのTAKAさんに相談したりもしているんです。
イノウエ
武尊さんでも悩んだりするんですね!
これまでTAKAさんから教わった言葉で、上手くいったと思えるセリフはなんですか?
武尊さん
それはひみつです(笑)
まとめ
画面越しに見る試合からでは伝わらない、武尊選手のうちに秘めた想い を伺うことができました。
目指しているのはチャンピオンではなく、あくまでスパースターであると、どこまでも高みを目指す武尊選手に感銘を受けました。
次回はK-1の盛り上げにかける想いと、武尊選手のこれからについて語ってもらいます。