ロードバイクは医者にも愛好家が多数?ビジネスとしても面白いスポーツバイク
私たち 2019.07.06 by G-lip E 編集部
ジョギングなどに比べて身体への負荷が少なく、気軽に始められるのがサイクリング。
漫画「弱虫ペダル」をきっかけに女性ライダーも増え、自転車メーカー各社からは女性向けモデルも続々と発売されています。
最近では、小売業界大手であるイオンも自転車専門店「イオンバイク」を展開し、PBブランドのスポーツバイクはエントリー層が始めやすい価格設定になっていると話題になっているほど。
シェアサイクルが都内を走っている姿は日常のものとなり、自転車ビジネスは各方面に拡大を続けています。
今日はロードバイク愛好家でもあるゴリラクリニック総院長・稲見先生に、スポーツバイクの“面白さ”をお聞きしました。
〈インタビュアー:イノウエ〉
イノウエ
稲見先生、今日はよろしくお願いいたします。
稲見
はい、よろしくお願いします!
イノウエ
看護師さんに伺ったのですが、本当に自転車で通勤されているんですか?(笑)
稲見
はい、そうですよ。雨の日はさすがにお休みしますけどね。
ひょっとして疑ってます?(笑)
イノウエ
いえ、そういうわけじゃないんですけど(笑)
ご自宅は確か東京寄りの神奈川方面ですよね、結構遠くないですか?
稲見
そうです。ゴリラクリニックの新宿本院までは片道20kmくらいですね。
ロードバイクだと割と楽勝です、調子が良いと45分くらいで着きますよ。
自転車通勤の猛者は往復100kmくらい漕ぐこともあるみたいなので、それと比べたら…
イノウエ
え、100kmですか? 先生、それは電車か車で移動する距離だと思いますけど…
稲見
いえ、ロードバイクは長距離を速く移動するためにデザインされているので、僕のような中年男性でもそれくらいの距離は乗れるんですよ。
初心者の女性でもロードバイクで都内から江の島まで往復しちゃった、なんて話は珍しくないんです。
イノウエ
でも、そんなに走ったらヘトヘトになって仕事どころではなさそうですけど(笑)
稲見
そうですね、例えば、消費カロリーで考えると100km程度を走った場合、体格やスピードなどによりますけど約2000キロカロリーは消費しています。
また、自転車乗りはとにかくよく食べます。プロともなると走りながら補給食を食べることもありますね。
イノウエ
先生、もしかして太っていてもあっという間にバキバキに筋肉質の身体が作れるってことですか?
稲見
それはちょっと違いますね(笑)
走り方にもよりますけど、ロードバイクでダイエットした場合は「上ヒョロ、下ムキ」の身体になります。
イノウエ
え、どういうことですか?
稲見
ロードバイクで主に使うのは大腿四頭筋やハムストリングス、そしてインナーマッスルです。腹筋や大胸筋、上腕の筋肉などはあまり使わない。
もちろんトッププロともなると話は違うと思いますが、なので上半身は割とヒョロっと、下半身はムキっとしやすい。
腹部は「シックスパックがガチガチで引き締まる」というより「インナーマッスルが鍛えられてドンとしっかりとした腹回り」になりがち。
海辺だとモテない体形なんですよね(笑)
イノウエ
なるほど、そうなるとロードバイクはエネルギーを使うけれど、筋肉が付きにくいということなんですね。
稲見
付きにくいというか、筋トレのためにロードバイクに乗る人は少ないと思いますよ。
ツール・ド・フランス4連覇のクリス・フルーム選手のふくらはぎを見ると、まるで女子のような細さです。
ボディメイクという観点からいうとロードバイクは“イマイチ“かもしれませんが、有酸素運動としては良いと思いますね。
イノウエ
そうなると、一般人のダイエットには最適、ということになりますよね?
稲見
そうです。体脂肪を燃やすには最適なんです。
自転車は、基本的には誰でも乗れますし、ダイエットに最適な有酸素運動を長時間行うことが可能ですから。3時間ジョギングすることはできなくても、自転車なら隣町にサイクリングに行く感覚でできてしまいますよ。
圧倒的シェア?あまり知られていない日本メーカーのすごさ
稲見
日本が世界に誇る、“自転車部品シェア”ナンバーワンのメーカーといえば、ご存知でしょうか?
イノウエ
自転車部品メーカーなんて気にしたこと無いですよ(笑)
タイヤでブリジストンとかですか?
稲見
答えはずばりShimano(シマノ)です。
自転車が走る上で欠かすことのできない部品「コンポーネント」と呼びますが、これを作っているメーカーです。
シマノは「自転車界のインテル」とも言われていて、自転車パーツでは世界シェア85%と言われているトップメーカーなんですよ。
イノウエ
「シマノ入ってる」状態じゃないですか(笑)
世界シェア85%って、もう圧倒的ですね。でも、ほとんど知られてないんじゃないですか?
稲見
いえ、自転車界では
常識中の常識です。
ヨーロッパではカンパニョーロというメーカーが絶対的存在として君臨していますが、シマノは自転車競技の本場ヨーロッパでもどんどん台頭しています。
2017年のツール・ド・フランスではステージ勝利を挙げた選手の自転車全てにシマノのコンポーネントが使われていて話題になったほどです。
イノウエ
なるほど。それでは、自転車の“車体メーカー”として有名なブランドはなんでしょうか?
稲見
個人的主観も入りますが、イタリアのDEROSA(デ・ローザ) COLNAGO(コルナゴ)Bianchi(ビアンキ)、アメリカのTrek(トレック) Cannondale(キャノンデール)Specialized(スペシャライズド)、フランスのTIME(タイム) LOOK(ルック)、など様々です。
僕が乗ってるFELTはドイツのメーカーですけど、やはり別格なのはCOLNAGOだと思います。
車に例えればフェラーリみたいな感じですね。
イノウエ
さすが、自転車でもイタリア車はトップブランドなんですね(笑)
稲見
でも、実は生産自体が台湾で、作ってたりするんですよ(笑)
それで、自転車の設計や生産技術が蓄積されて、台湾メーカーのGIANT(ジャイアント)やMERIDA(メリダ)が高品質なスポーツバイクメーカーになったりしました。
もちろん、プロも使用している高性能なスポーツバイクです。
ロードバイク乗りは高所得者が多いわけ
イノウエ
そういった海外ブランドのイメージなのか、 ロードバイクは「高価」というイメージが根強く、それが買える訳だからやはり、高収入な人たちばかりなんですよね(笑)
稲見
確かに、ロードバイクに限らずMTBなども含めてスポーツバイクは、ママチャリに比べたら高額です(笑)
でも、ちゃんとしたメーカーのエントリーモデルとなると5万円程度。この5万円を安いと感じるか高いと感じるかだと思います。
イノウエ
僕は正直高い
と感じますね(笑)
自転車に5万も払うのってお金持ちの感覚ですよ…
稲見
そうですよね、でも最近はその意識も変わってきていると感じます。
近年、構造がシンプルなピストバイクが人気で、値段もそれなりに高価なんですけど、若者を中心に人気を集めているんです。
お金があるから“高価な自転車を買う”のではなく、自らの“生き方を体現”するひとつの手段として、自転車があるのだと思います。
イノウエ
どういうことですか?
稲見
ピストバイクってシンプルなんですよ。余計なものが付いていないので。
逆に、もの凄く高価なロードバイクに、ちょっとお腹の出たオジサンがピチピチのウェアを着て乗っている、しかも速くない(笑)
これって若者にとっては「カッコ悪い」
ことに映るんじゃないかなと思うんですね。
「自分たちは違うぞ」という主張がピストバイクに現れているように感じます。
あと、トライアスロンにハマる人に経営者層が多いのってご存知ですか?
イノウエ
泳いで・乗って・走る、僕には絶対にゴール出来なさそう(笑)
でも、なぜ普段は忙しそうな経営者が参加するんですか?
稲見
異なる3つの種目がある、これは総合的な身体能力が求められます。
何より挑戦する姿勢、日々の努力が必要
で、経営者の方々は「挑戦する」ことに快感を覚える人が多い。
はじめは健康づくり程度の軽い気持ちで始めたランニングやサイクリングにだんだんハマり、自己ベストを更新していく。身体能力が上がることが手に取るように分かる、さらにハマる。
そんな流れで、多くの経営層がトライアスロンを趣味としているようですね。
イノウエ
なるほど。そのトレーニングの中で自転車にはまるわけですか(笑)
稲見
何より男子は速いものが好きですからね(笑)
そしてメカメカしいものも大好き。同じカーボンバイクでも、メーカーによって乗り味が違うのも面白い。自分の「相棒」を探す楽しみもありますね。
カタログを眺めながら、あれもいいな、これも欲しいと悩んでいる間が一番楽しい(笑)
ところで、もっとも「沼」にはまるパーツって何だと思いますか?
イノウエ
やっぱり大切なのは本体のフレームじゃないですか?
稲見
残念、実はサドルなんです。
「サドル沼にはまる」という言葉も生まれるくらい、自分に合うサドルを見つけるのは難しいんですよ。新しいサドルを試しては、ああでもないこうでもないと次々にサドルを変える人も少なくありません。
そして、ここだけの話、僕は「ライト沼」にハマっています(笑)
より明るくて耐久性があって使いやすくて、そして安いのがないかと、どっぷり沼に浸かっている状態です(笑)
噂の「ロードバイク障害」はホント?
イノウエ
先生、そのサドルの話で気になる噂を聞いたことがあります。
細いサドルが局部を圧迫して“男性器に良くない“と聞いたんですが、本当なんですか(笑)
稲見
最近はいろいろな形状のサドルが出ているんですよ。中央部にスリットが入っていて局部の圧迫感を減らすものもあり、不安を感じる方はこのようなサドルを試してみると良いと思います。
それと、意外と重要なのがサドルの角度ですね。
痛みを感じるようであればサドルの先の部分をちょっと下げてみるとよいと思いますよ。このような微調整は、信頼できるショップの店員さんに相談するのがベスト。
間違った乗り方をしていると腰や首を傷めたりすることも珍しくないので、ライディングフォームを見てもらったりサドルを調整してもらったりすれば、より楽しいバイクライフを送れるじゃないでしょうか。
イノウエ
なるほど、サドルは角度が重要なんですね!
これは個人的な疑問なんですが、なんで足の毛を剃るんですか(笑)
稲見
ロードバイクあるあるです(笑)
プロの世界では、足の毛があるとマッサージを受けるとき痛い、ケガをしたときに治療が受けやすい、などの理由で毛を剃るのが一般的となっています。
それを一般人が真似した結果「自転車乗りは足の毛を剃る」という文化が定着したのかもしれません。
また、ある自転車メーカーの実験によると、すね毛を剃ると7%も空気抵抗が減るそうで、科学的にも毛を剃ることの重要性が証明されたみたいですよ。
イノウエ
足の毛が空気抵抗になる?空気抵抗が生まれるくらい剛毛なら大変ですね…
稲見
1分1秒を争う世界ですからね、ちょっとでも速くなるためには努力を惜しまないと思います。
それに7%の抵抗減というのは、エアロ素材のウェアやヘルメットと同じくらいの効果といえるので、そう考えると、足の毛を剃ることは費用対効果が高いわけです。
でも一般人にしてみると、この「足の毛を剃る」ということのハードルが高い。おそらく、恥ずかしいんだと思います。
イノウエ
僕がロードバイク始めたら、すね毛脱毛してください(笑)
本日は楽しいお話ありがとうございました。
稲見
こちらこそ、ありがとうございました。
まとめ
ロードバイクを始めるにあたって初期投資は大きいものの、大人の趣味として醍醐味を感じました。
休日に、ロードバイクで走る河川敷では新たな発見が見つかることも。
普段は忙しいビジネスマンでも、休日の趣味だけにとどまることなく、稲見ドクターのように1つの移動手段として通勤で利用することもアリかもしれません。
便利な乗り物が故、スピードも出やすく、事故の危険も伴うロードバイクですが、道路交通法を守り、安全なロードバイク生活をスタートしてみては。