プロフェッショナルレーシングドライバー横溝直輝 アスリートからみた朝食の大切さ
ヒト 2019.07.01 by G-lip E 編集部
「時間がない」「準備が面倒臭い」「ダイエットのため」厚生労働省の平成29年国民健康・栄養調査によると、朝食を食べない割合が20代で47%、30代では37%に達しています。
朝食を抜くと、脳のエネルギーが減って仕事のパフォーマンスが低下。
イライラするので精神的にも不安定になります。血糖値の急な変動や自律神経の乱れから、体調を崩すことも…。
今回取材したのは、世界各地のレースで活躍するレーシングドライバーの横溝さん。朝食では、食材やメニューだけではなく、食べる環境にも気をつけていると言います。勝利を導く朝食についてお話をうかがいました。
〈インタビュアー:イノウエ〉
イノウエ
今回は、朝食を摂らない割合が増えてきているということで、朝ごはんについて、お話をおうかがいできればと思いまして。
横溝選手
そうですね、増えているみたいですね。
イノウエ
日々ストイックなトレーニングをされていると思いますが、横溝さんは朝食に気を使っていますか?
横溝選手
体調のコントロールのために、気をつけていますね。
レース中はコックピットの中が70〜80度にもなるので。
イノウエ
サウナ状態ですね(笑)
横溝選手
そうですね。300キロで走る車を脱水症状ギリギリの状態で、コントロールすることになります。
なのでエネルギー不足は本当に危険ですから、しっかりエネルギーを摂るようにしています。
イノウエ
パフォーマンスに大きく関わってきますね。
横溝選手
レースは昼間が多いんですけど、直前に食べることはありませんね。
集中力を高める必要があることも1つの理由ですが、そもそもお昼に食べたものはすぐにエネルギーにはならないので、直前に食べてもあまり意味がないんです。
イノウエ
エネルギーはないのに、お腹はいっぱいという状態ですね。
横溝選手
そうですね。
パフォーマンスを発揮したい時間から逆算すると、朝食でしっかりエネルギーを摂取するのがベストだと思います。
イノウエ
私たちも、大事なプレゼンの時間に合わせて、食事をとったり真似できる気がします。
何か朝食で特に意識して食べているものはありますか?
横溝選手
体質的に貧血になりやすいのでアサイーを食べてます。
イノウエ
スーパーフードは貧血にもいいんですね。
横溝選手
それから、ポリフェノールも豊富なので、目を酷使するレーシングドライバーとしては食べておきたい食材ですね。
食べる環境で精神的な充実度が変わる
イノウエ
世界各地に遠征されていて、印象に残る朝食はありますか?
横溝選手
アブダビのコース内にホテルがあるんですが、そこで食べた朝食は印象的でした。
レストランからの眺望が素晴らしいんですよ。日本の朝焼けはオレンジ色っぽいですが、暗闇からピンク色の朝焼けが広がってくるんです!
イノウエ
想像するだけで綺麗ですね!
横溝選手
景色を眺めながら、朝食を食べていると自然にモチベーションが上がってきますね。
食べるモノも大切ですが、食べる場所で気分が全く変わるんですよ。
イノウエ
朝食は一人で食べるんでしょうか?
横溝選手
一人の時もありますけど、監督やチームメイトと食べることもありますよ。
リラックスした状態でコミュニケーションもとれるので良いですね。
イノウエ
ミーティングをリラックスした状態でするイメージですね。
チームの雰囲気づくりにも効果的な感じがします。
横溝選手
何より食事ですから一緒に食べたほうが美味しいんです。美味しい=ハッピーです(笑)
精神的にも充足できますしね。
イノウエ
食事が美味しいと幸せな気分になりますよね。
ホテルで食べることが多いんですか?
横溝選手
多いですね。安心して食べられますし、ビュッフェスタイルが多いので、そのとき食べたいものを食べられるんですよ。
でも、食べすぎには気をつけないとなりませんよ。
プロフェッショナルレーシングドライバーの節制と勝負の美学
イノウエ
やはり、レーシングドライバーにとって、体重の維持は重要なんですか?
横溝選手
チームのみんなが車体を1グラムでも軽くするため、日々努力してくれているんです。
それを自分の食べすぎで台無しにすることは絶対にできませんから。
節制は重要というより当たり前のことですね。
イノウエ
そう言われると納得です。
横溝選手
モータースポーツはドライバーが注目されるので個人競技に思われがちですが、実は約20人が参加するチームスポーツなんです。
頑張りを見せることで、チームのモチベーション・コントロールにも繋がりますし。
チームを引っ張るためにリーダーシップを見せる。どんな仕事でも同じですよね。
イノウエ
頑張りを見せてる人には、頑張りで返したくなりますね。
横溝選手
「横溝のために最高のマシンに仕上げよう」と思ってもらえるように努めています。
イノウエ
毎レース熾烈な勝負を繰り広げられてますが、勝負に関しての美学のようなものはありますか?
横溝選手
もちろん、勝負にこだわりますよ。
勝つために全力を尽くすと同時に、どんなに状況が悪くても手を抜かずやり抜くことも大切にしています。
レースによっては後方で走行しなければいけないことがあるんですけど、常に勝利のために全力を尽くしています。
イノウエ
後方での走行はモチベーションが下がりそうですね。
横溝選手
それでも手を抜くことはできませんよ。
パフォーマンスが出しにくい環境ですが、僕たちが出場しているのは、自分たちが子どもの頃に、見にいくのを何ヶ月も心待ちにしていたレースなんです。
イノウエ
揺るがない美学、大事なモノがあると、
最後まで良いパフォーマンスを出しきることができそうですね。
プロ意識が朝食抜きの生活を変えた
イノウエ
子どもの頃から朝食は毎日食べていたんですか?
横溝選手
学生時代はほとんど食べていなかったんですよ(笑)
食べずにレースに出るので、エネルギー不足になったこともあって
プロ意識が高まるにつれて、しっかり食べるようになりましたね。
イノウエ
まずは、目的意識を持つことが大切ということですね。
横溝選手
それから、朝ごはんを食べないのには理由があると思うんですが、僕の場合は朝にお腹が空かなかったんです。
イノウエ
僕も寝起きだと、お腹が空いていませんね…
横溝選手
朝にお腹が空かないのは大抵、前の日の夜に食べ過ぎているんですよね。
夜に食べる分を調整すると食べられるようになりますよ。
イノウエ
もともと朝食が苦手だったと聞いているので、すごく説得力があります。
横溝選手
朝一口からでも食べるようにすれば、だんだん食べられるようになると思いますよ。
イノウエ
朝食で仕事のパフォーマンスをあげる。
という目的意識を持って、一食ごとの量を調整したり、一口でも食べるようにして習慣を変えていくということですね。
「アスリートセンサー」体が必要としているものを食べたくなる
イノウエ
朝食で失敗したこととかってありますか?
横溝選手
うーん…ああ!
若い頃にアジアに遠征に行ったときに、外で食べてしまって、少しお腹を壊したことはありましたね(笑)
まあ、レースに支障が出るほどではありませんが、それ以来かなり気をつけていますね。
イノウエ
慣れない場所だと、食べ物でも安全かそうでないかの判断が難しいんですね。
横溝選手
あとは頑張り過ぎて精神的に負担が出てきてしまったことはありますね…
栄養バランス、量、タイミング、食べ方、全部を完璧にするには結構負担がかかります。
イノウエ
無理はよくないということですね。
横溝選手
手段が目的になっては問題ですね。重要なのは結果なので。
最近はそのときに食べたいものを食べるようにしてるんです。
食べたいものだと、朝食が楽しみになりますし、美味しい=ハッピーですから。
イノウエ
食べたいものを食べても、栄養バランスは大丈夫なんですか?
横溝選手
これはアスリートとしてのセンサーが働いているのかもしれませんが、だんだん体が欲しているものがわかるようになってくるんです。
体が必要としているものを食べたくなる感じですね。
イノウエ
アスリートは違うんですね。
そういえば、サッカーの本田圭祐さんも一口単位で必要なカロリーがわかるという話を聞きました。
横溝選手
アスリートでなくても、意識していればだんだんと感じられるようになると思いますよ。
あと、取りにくい栄養はサプリメントで補ウとかですね。
イノウエ
朝食を楽しみながら最後はサプリメントを補給。
無理しないから続けられるんですね。
験担ぎ!勝利を招く"緑のたぬき"
イノウエ
ちなみに縁起を担いだりしますか?
横溝選手
実は結構、験担ぎするんです。
長く勝負に関わっていると、そういうものが増えてきて(笑)
イノウエ
何か1つだけでも教えてください(笑)
横溝選手
そうですね、緑のたぬきが。
イノウエ
カップ麺のですか!?
横溝選手
そうです(笑)
あるレースの前にマルちゃんの"緑のたぬき"を食べたんですけど、そのレースで優勝して。
それからはカップ麺は緑のたぬきと決めています(笑)
イノウエ
すごく、親近感がわきます!
横溝選手
それからも、"緑のたぬき"のときは調子がいいんですよね。
イノウエ
なるほど、貴重なエピソードですね!
ありがとうございました。
まとめ
プロフェッショナルレーシングドライバーの横溝さんも、元々は朝食をとるのが苦手だったという話に親近感を覚えました。
より良いパフォーマンスを出したいというプロ意識が、ルーティンを変えていったんですね。美味しい=ハッピーから始まる朝は実践してみたくなりますね。