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玄人に好かれるサーファーとして、日本のサーフィンを盛り上げたい

ヒト 2019.10.29 by G-lip E 編集部

前編では「勝ち負けや優越より、仲間と心から楽しむサーフィンをこの先も続けたい」と話してくれた、プロサーファーの大橋さん。

誰もが、夢中になれること、それは、「目の前のことを心から楽しむこと」だと、思い出させてくれました。しかし、忙しさのあまり、結果だけを追い求めてしまったり、目の前のなにか心から楽しむことを忘れてしまうことも少なくありません。

本編では、大橋さんがサーフィンを楽しむうえで大切にしていること、目指している姿について伺い、東京オリンピックでの楽しみ方について教えていただきました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

玄人が好きなサーファーであり、喜ぶファンを見るのが好きだ

イノウエ

大橋さんの中で、サーフィンを「競技」として、「文化」としての二つに分けて考えた場合、その違いはどういったところにあると考えてますか?

大橋さん

「競技としてのサーフィン」は、単純に勝ちか負けかということなんですけど、「文化としてのサーフィン」は、勝ち負け関係なく、波と自分がどれだけ一体化して気持ちよくなるかという自己満足の世界だと思っています。

本名・大橋海人(おおはし かいと) 1992年茅ヶ崎生まれ、地元湘南・茅ヶ崎を拠点とし、アマチュア時代から数々のコンテストで優勝。JPSA(日本プロサーフィン連盟)プロ昇格と共に『ルーキーオブサイヤー』獲得、24年ぶりに開催した伝説のビックウェーブコンテスト『稲村クラシック』でも優勝など数々の国内外コンテストでリザルトを残した。2015年は WSL日本チャンピオンに輝き、2016年のWSL QS10,000という世界最高峰のコンテストのワイルドカードを獲得世界に近いライダーの1人として、オリンピック強化指定選手に選ばれる。

大橋さん

あとは新しいポイントを発掘してみたり、新しい土地に行ってみたいという思いが、自分だけじゃなく、もともとサーフィンの持ってる文化なのかなと思いますね。

イノウエ

文化についてのサーフィンは、人それぞれ考え方が異なる気がするんですけど、大橋さんが波と一体化したときは、どんなことを感じますか?

大橋さん

もう、 気持ちよさしかないですね(笑)。
鳥肌が立つような。何にもいい表せないんですけど。それが映像化されて残れば、もっと嬉しいというか、そういうランディングですね。

イノウエ

以前、なにかの取材で「大会とフリーは別」と仰っていたと思うんですが、大橋さんはフリーの方が好きということでしょうか。

大橋さん

圧倒的にフリーが好きですね。大会って、負けたらもちろん口惜しいんですけど、 優勝してもそんなに嬉しくないっていうか。

大橋さん

たとえばサッカーなら、勝利したことをチームで心から喜べると思うんですけど。
サーフィンは個人の競技なので、自分が勝つと、負けた選手が一人で悔しがっていて、それを見ると勝って嬉しいんだけど楽しくない、だから心から喜べないんですよ。でも、フリーの場合は時間制限なく、みんなで一緒にいい波に乗って。後で映像を見たとき、みんなの表情が全然違ったり、そういうのを見ると心から楽しいって思えるんです。

イノウエ

フリーの魅力は、みんなで楽しむことなんですね。
でも、プロサーファーとして大会という勝負の場面は避けては通れないですよね。

大橋さん

そうですね。スポンサーさんだったり、昔から応援してくれている人たちの喜んでくれる姿を見るためにも、 勝ちたいという思いもありますよ。

イノウエ

プロのサーファーとして活躍されていると、いろんな観客、ファンの人がいると思うんですが、大橋さんは、サーフィンをする自分の「技や表現」を見てほしいのか、「自然や海が大好きな自分自身」がするサーフィンを見てほしいとか、ありますか?

大橋さん

どっちかなあ。でも、「俺を見てくれ」っていうのはなくて。自分のサーフィンで、盛り上がっている人たちを見るのが好きですね。

イノウエ

それは、技や表現、波と一体化している姿を見てもらいたうということですね。
そうなると観客を盛り上げる為の大技など、意識したりしますか?

大橋さん

そうですね。観客が玄人と素人で分かれるんですけど、僕は玄人の人たちが好きなサーファーでいたいという思いがあって。
そういう人たちに向けて大技を披露すると、やっぱりみんな盛り上がってくれるんですよ。

イノウエ

素人の僕でも、周りが盛り上がれば凄い技なんだなと、分かりそうです(笑)。
大橋さんのファンの方は地元の方が多いんですか?

大橋さん

そうですね。茅ヶ崎がサーフタウンで、今お店にいる人たちも、僕が小学生ぐらいからずっとお世話になってる方もいて、応援してくれている人たちばかりです(笑)。
だから、そういう人たちが自分のパフォーマンスで盛り上がってくれるのを見るのが一番嬉しいんですけど。地元でサーフィンをしている時だったり、いつものおじちゃんとか、働いている人たちが見ている中で、良いパフォーマンスができると嬉しいですよね。

茅ヶ崎店のサーフボード販売を担当している杉山さんは、過去に全日本ジュニアクラス優勝をした経験を持つ方です!

波の上でダンスをするためには、波を正確につかむこと

イノウエ

大橋さんの理想とする、サーフィンの形はあるんでしょうか。

大橋さん

よく聞かれるんですけど、「波と調和して波の上でダンスしているようなサーフィンが僕の理想」ですね。

イノウエ

波に乗るのではなく、波を乗りこなすということですか?
それとも、環境に左右されず、自分を表現するということでしょうか?

大橋さん

波は一本も同じものがなく毎回違うので、 「はじめての波にいかにフィットさせて乗れるのか」自分の中でのかっこいいポイントというか。それができるサーファーがかっこいいと思っていて。

大橋さん

大会という部分では、ポイントさえ押さえておけば勝てちゃうんですけど。
そうじゃなくて、 波とダンスしているような一体感のあるサーフィンが、自分は見てて好きなので、自分もそういうサーフィンをしたいですし、そう有りたいですね。

イノウエ

大橋さんが他のサーファーさんのランディングを見る時と、大橋さんが競技としてランディングする時は、観客側の視点に立ったランディングを意識したりしますか?

大橋さん

それはしてますね。自分が見ていてテンションの上がるライディングとか、上の空で常にあって、そいうことをやりたいなと思ってますよ。

イノウエ

競技のなかで上達するポイントというのは、プロとして活動している現在もありますか?

大橋さん

あるとすれば、サーフィンの技術面だけですかね。競技の勝ちパターンというのはあるんですけど、自然が相手だから、それもゼロからスタートというか。
いい波が来なかったら勝てないし。野球やサッカーのように、準備ができない部分が多くて。強いていえばカンを鍛えることくらいしかできません(笑)。

イノウエ

つまり、運の要素もあるんでしょうか。

大橋さん

もう、 運が大半じゃないですかね(笑)。
大会で、自分以外の人の時に一番いい波が来ちゃって、それに乗られちゃうと、どんなに自分がすごい技をやっても、いい波に乗った人のほうがポイントは付きやすいので。その人には勝てないんですよね。

イノウエ

自分が乗りたい波を見極めることが、勝敗の鍵になりそうですね。

大橋さん

サーフィンの上手な人は経験もたくさんしていて波の見極めも上手なんですけど、中でも若い子たちは、「なんでそれ乗るの?」みたいな、変な波ばっかり乗ってることも多かったりして。
もちろん僕もそう思われている時もあるだろうし、そういう意味では奥が深いと思いますね。

国をまたいだ活動で、これからの日本のサーフィンを盛り上げる

イノウエ

若い子たちの指導というか、何か活動していることもあるんですか?

大橋さん

自分が見ててめちゃめちゃサーフィンの上手い子ってたくさんいるんですよ。
オーストラリアとか 外国では、むしろそういうサーファーに人気があって、彼らの着てるものやグッズが売れたりするんです。

イノウエ

どうして、日本では若いサーファーさんにスポットが当たらないんでしょうか。

大橋さん

日本だと、 そういう子が大会では勝てないんですよね。勝てないからサーフィンだけではご飯食べれなくて、上手い子たちがどんどん埋もれているのが現状で。
そういうのが悲しくて、そういう子たちがサーフィンで食べていけるような業界にしたいと思って、今はいろいろと動いているところなんです。

イノウエ

具体的には、どんな活動をしているんですか?

大橋さん

大会ですごく勝っている人でも、なかなか撮ってもらえないほど世界的に有名なオーストラリア人のカメラマンと仲良くさせてもらっていて。
ある種カリスマ的な存在の彼に、埋もれてしまっている日本の優れたサーファーたちの動画を撮ってもらって、世界に紹介すれば、「かっこいいサーフィンをもっとたくさんの人に知ってもらえるんじゃないか」と思っていて、実際に交渉しているところです。

イノウエ

有名なカメラマンさんに撮ってもらえることで、知ってもらえたら嬉しいですよね!
そういった活動を通じて、サーフィン以外で、自分が成長を感じることがあったりしますか?

大橋さん

言葉も通じない 海外の土地で、いろんな人に助けられて問題をクリアできたときは、自分でもちょっと成長したかなと思います(笑)。

大橋さん

先日もチリに行ってきたんですけど、スペイン語しか通じなくて、英語も通じないんですよ(笑)。
でも、自分の言葉がわからないながら、一生懸命ヘルプしてくれる優しい人たちもたくさんいて。そういった経験をしてると、自分ももっと人に優しくしようって思えますね。

イノウエ

人とのコミュニケーションは世界共通なんですね。
スペイン語は難しそうですけど、世界の大会とかでは英語は必要ですよね。

大橋さん

英語の勉強は全くしてないんですけどね(笑)。
それでも小さい頃から海外に1人で行ったり、その時から当然周りは英語なので、ちょっとずつわかってきて、会話はできるようになりました。

自然の競技サーフィンは、最後まで勝ち負けがわからない

イノウエ

世界で活躍するプロサーファーとして、大橋さんの目標はありますか?

大橋さん

全然ないですね(笑)。
今はとにかく、1日でも長くサーフィンをやりたいので、「どうやったらサーフィンだけをずっとやっていける環境を作れるのか」を考えていて、それが自分のテーマですね。

イノウエ

最後に、来年に控えているオリンピックで、僕たち観客からの視点で、サーフィンの面白さ、楽しみ方を教えてください!

大橋さん

サーフィンというスポーツが自然が全てなので面白いと思います。
競技では「1人何本」と決まっている訳ではなく、制限時間なので、残りタイムの数秒でいい波に乗って、大逆転できたりするのがサーフィンなので。最後までわからないという面白さがありますよ。

イノウエ

素人の僕はよくわからないんですけど、すごい技を決めたら得点が高いとか、そういうことなんでしょうか。

大橋さん

競技は、加点されるポイントを突いてくのが一番無難に点数を稼ぐ方法で、あとは難易度の高い技を決められたら高い点数がもらえます。
ただ、それはリスクも高く、一番いい波に乗って転ぶと、もう波が来ないかもしれません。でもそういうパフォーマンスをする人が多いと、観ている観客は楽しいと思います(笑)。

イノウエ

ある意味、戦略を立てて、「どこまで点数を稼げているか」考えながら、大技をやる判断をしなければならない場面もありそうですね。

大橋さん

そうですね。自分もラウンド1、ラウンド2では無難にやって、最後に大技を出すということも考えたりします。
与えられた20分という制限時間の中で、大技を繰り出している人はすごいと思いますよ。
そう考えるとやはりサーフィンは面白いスポーツだと思いますね。

まとめ

理想のサーフィンは、「波と調和して波の上でダンスしているようなサーフィン」で、「観客が盛り上がるサーフィンをするのが好き」と語ってくれた大橋さん。

自分が理想とするサーフィンを追い求め、大会での結果を出すことの大切さを教えてくれました。準備が出来ない、自然が相手のサーフィンだからこそ、日頃の練習から波を見極める力を鍛え、試合で結果を残すことができるのだと思います。

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