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闇営業の定義とは?医師の立場から提言する“闇”ではない「副業」のすすめ

私たち 2019.08.29 by G-lip E 編集部

お笑い芸人が詐欺グループの忘年会に参加したことが大々的に報じられて以降、「闇営業」という言葉が巷を席巻している。

こうしたなか、本業で得た給与以外の収入までも「闇」として扱われかねない、堅苦しい社会へと時代が逆戻りしつつあるのではないだろうか。

はたして「闇営業」の定義とは、ビジネスパーソンは何を心得ておくべきなのか、昨今一般企業でも推奨されつつある“副業”との相関は?

今回も、ゴリラクリニック総院長の稲見文彦先生に、医師から見た「闇営業」と副業の関係と、これからのビジネスパーソンにとっての“副業”の正しいあり方について伺ってきました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

医業界の“副業”事情

イノウエ

「闇営業」という言葉が、最近のメディアで扱われていますが、稲見先生はどう感じますか?

稲見

お笑い界を大きく巻き込む一連の事件が報道されるなか、キャッチコピーのように使用されるのは仕方ないと思います。
でも、問題の本質を見極めるという意味で”闇営業の定義”を捉え直す必要があるように感じます。

イノウエ

世間一般では、闇営業のことを「直営業」、つまり「直接営業すること」とイメージしているのではないでしょうか。

稲見

そう。つまり所属企業などを通さずに仕事を受け、収入を得ることですよね。
でも、この定義をしてしまったら、副業やアルバイトで得た収入もすべてが、闇営業となってしまうんですよ。

イノウエ

芸能人だけではなく、企業に勤めている人の中にも、そのような収入を得る機会はありますからね。

稲見

我々医業の世界だと常勤として所属している、病院・大学病院以外の病院で働くことは”当たり前の事”だったりもするので、それさえ「闇営業」とされてしまったら、正直困ってしまいますね(笑)

イノウエ

ちょっと待ってください!
それは企業で働く勤め人となると、副業に該当すると思うんですけど、大丈夫なんですか?

稲見

副業よりアルバイトの方が、しっくりくると思うよ。
我々の中では「定期非常勤」とか「スポット」と呼ばれる働き方になるんだけど、「定期非常勤」は、継続的に一定期間、決まった時間に働く業務形態を指し、対する「スポット」は、臨時で特定の日だけを限定して働く業務形態のことで、そのように働くことは特別なことではないからね。

イノウエ

「毎週火曜日の診察」は「定期非常勤」が、「○月○日の当直」はいつものドクターが所用で休みになってしまったから、「スポット」にお願いしようという感じですか?

稲見

そう。定期アルバイトと単発のアルバイトの違いと解釈してもらえれば、わかりやすいと思います。

医師が病院を“掛け持ち”する理由

イノウエ

でも、お医者さんはお金持ちだから、アルバイトする必要がないような気もするんですけど(笑)

稲見

お医者さんは一見高給取りだと思われるんだけど、医業も広くて、そうでない方もいるんですよ。
信用の面では最高ランクなので、ローンを組みやすいというのはありますけど。それにまだ若い勤務医の場合、それほどリッチな生活ができないことがあるんじゃないかな。

イノウエ

そうなんですか?僕たちが抱いている先入観とはかけ離れているんですね。

稲見

もちろん「定期非常勤」や「スポット」でアルバイトをする理由は、お金が目的という訳ではないんですよ。
例えば、病院から常勤のドクターに「〇〇の病院に非常勤(スポット)で欲しい」と応援を指示されるケースや、別の病院から「信頼できる専門医を紹介してくれないか」と支援を依頼されるケースがあったり、その一回をきっかけに非常勤ドクターとして働き始めることもあります。
それらは医師の慢性的な人手不足から、病院を掛け持ちせざるを得なかったりするんです。

イノウエ

いわば、企業側(病院)がお医者さん(従業員)にアルバイトを積極的に斡旋しているわけですか?
僕らビジネスマンでは、あまりないケースですね。

稲見

後は、キャリアを考え「活躍できる場を広げたい」「複数の病院で知識や技術を習得したい」など、自らのスキルアップを目的とするポジティブな理由があったり、これらの意味からも“職場の掛け持ち”が容認されている医業が、特殊な業界なんだと思います。

医者の「闇営業」とはブラックジャック

稲見

私が一番危惧しているのは、闇営業の”闇”という単語が突出してしまう事で、世間に定着し始めている企業が副業を容認する姿勢が、台無しになってしまうことなんですよ。

イノウエ

つまり、具体的にどういうことですか?

稲見

最近では、所属している企業以外から受け取った収入を、「闇」という一言で片づけてしまう風潮があるように感じます。
これは時代に逆行した、危惧すべき兆候だと思うんです。
たとえば、職場を掛け持ちするのは、あきらかに闇営業と一線を画していますけど、医業における「闇営業」は、無許可・無免許で医療行為を行うこと。
漫画の『ブラックジャック』だと思うんです(笑)

イノウエ

なるほど(笑)つまり、闇営業と副業は切り離して考えるべき、ということですか?

稲見

そうですね。副業は自らのスキルを活かしたものを選ぶと良いんじゃないでしょうか。
その上で社会人として規則、法令遵守となる副業が推奨されるべきで。
我々医業に限ったことではないんですけど、自分が会社以外で活躍できる場を見いだしたり、スキルアップすることは収入を増やすだけではなく、新たな出会いが生まれ、共通の知人ができたりするチャンスでもあると思います。

“副業”と時代の流れ

稲見

リーマンショック以前までは、多くの企業が副業を禁止していました。「社内の仕事だけをやる」というのが主流だったんですね。
それがリーマンショックを境に風向きが変わった。
政府が「働き方改革」を提唱しはじめた頃から、生活のためだけではなく、自身の成長や自己実現など、幅広い目的で副業を容認する企業が多くなってきたんです。

イノウエ

もはや、 一つの企業に絞って生きていく時代ではないということですね?

稲見

そう感じます。
これからは“副業容認”の方向へ舵を切る企業がもっと増えていくんじゃないかな。
とはいえ、副業に精を出しすぎて本業が疎かになるのは本末転倒。「副業はあくまで本業あってこそ」という原則は、忘れてはいけませんけどね(笑)

まとめ

働き方改革のスローガンである「一億総活躍社会」を目指す取り組みとして、働く人々が個々の事情に応じた“働くスタイル”を選択できるよう、企業にも柔軟で多様性のある環境づくりが求められています。

そんななか、自身の会社以外にも目を向け、積極的なコミュニケーションを図る姿勢が、結果として生涯賃金の向上や、生産性の底上げにもなると“副業”の概念も変わりつつあります。

「自分探し」や「自分磨き」という意味でも、今の世代を生きるビジネスパーソンは、かつて“終身雇用が常識”とされていた時代より、無数のチャンスに恵まれているのかもしれません。

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