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G-lip 男の“気になる”を刺激するメディア

プロフェッショナルレーシングドライバー横溝直輝 レーシングドライバーから見た「車」の未来

ヒト 2019.07.08 by G-lip E 編集部

20代の運転免許保有率、自動車保有率が下がり、若者の車離れが問題となっている。
要因は可処分所得の減少やライフスタイルの変化、都市では住環境の変化などが挙げられ、カーシェアリングなどのシェアリングエコノミーの普及、交通の便が良くなったことも考えられます。

一方、モータースポーツ界では、不振がささやかれていた2018年、F1日本グランプリが前年の来場者数の13,000人を上回り、SUPER GTの観客動員数は2日間で10万人と再度注目を集めています。

今回は、SUPER GT・GT300クラス、Asian Le Mans Seriesなどでシリーズチャンピオンに輝き、ZOZOTOWNの代表取締役社長を務める前澤友作氏が主宰する「前澤友作 スーパーカープロジェクト」にも参加する、横溝直輝選手にレースの魅力とモータースポーツの普及活動に込める想いを伺いました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

実は観客動員数を伸ばしているカーレース市場

イノウエ

最近では、20代の車離れがメディアなどでよく見受けられるようになりましたね。

横溝選手

そうですね。
保有率などは少し下がっているようですけど、僕の周りでの変化はあまり感じていないですよ。
少し言葉が先行してしまっている気がしますが…

イノウエ

レースでは、これまでと比べ変化は感じますか?

横溝選手

モータースポーツではファンが増えているものも多いですよ。
実際にSUPER GTでは動員数を増やし続けていて、2019年は富士スピードウェイというサーキットに、2日間で10万人が来場しました。

イノウエ

え、10万人も?
モータースポーツのマーケットが広がっているような印象がありますね。

横溝選手

富士スピードウェイは、車でないと行けないような利便性が低いエリアなんですけど、レースを見るためだけに10万人が詰めかけたんです。
モータースポーツはどんな競技よりも実際に見た方が、魅力が伝わるスポーツと言われていますから。

※SUPER GT(スーパー・ジーティ)とは
そもそもGTとは「Grand Touring(グランド・ツーリング)」の略称で、高性能な乗用車グレードを指すものだった。
そのGTカーをベースにしたレーシングカーで行われるレースの”シリーズ戦”をSUPER GTと呼ぶ。


画像:PACIFIC RACING TEAM:パシフィックミライアカリ NAC ポルシェ

イノウエ

なんとなく、分かる気がします(笑)
でも、サーキットだとコアなファンが多いという印象があるんですけど。

横溝選手

そんなことないですよ、コアファンだけではなく子どもからお年寄りまで、幅広い年齢の方に来場していただいています。

イノウエ

かなり幅広いんですね。
僕も一度行ってみたくなりました。

横溝選手

是非、見にきてください!
サーキットだと美しい車体、エンジンの音、振動、ガソリンの匂い、スピード感など五感に伝わってきて、画面越しでは感じることのできない、アドレナリンが出るような感覚を体感していただけると思いますし、初めての方でも楽しめると思いますよ。

楽しむべきは、競技の中に見る筋書きの無いドラマ

インタビュア

初めてサーキットに行くなら、まず何に注目すると楽しめますか?

横溝選手

まずは、お気に入りの車や人を見つけます。
例えば、男性だったらレースクイーンでも良いですし、女性ならイケメンドライバーなんかに注目すると楽しめるんじゃないでしょうか(笑)

イノウエ

それなら、好みに合わせて直感的に見つけられそうですね(笑)

横溝選手

そうですよね!まずは、分かりやすいところから入って、体感すると良いと思います。
応援するチームが見つかると、自然とレースが面白くなって、さらに楽しめるのでオススメです。

イノウエ

応援するチームが決まると、順位やタイムが気になってしまいそうですけど。

横溝選手

純粋な数字もそうですが、見ていく内にヒューマンドラマが見える様になると思いますよ。

イノウエ

ヒューマンドラマですか?

横溝選手

そうです。 他のスポーツと同じようにライバルチームがいて、戦略がハマったり、失敗したり。
レースにも感動があり、まるで 筋書きのないドラマの様です。

本名・横溝直輝(よこみぞ  なおき)
1980年神奈川出身。13歳でカートレースデビュー。近年ではスーパーGTチャンピオン、アジアンルマンチャンピオン、ブランパンGTシリーズアジアで日本人初優勝を記録。国内最高峰フォーミュラーニッポンの参戦やSUPER GT500クラス・GT300クラスの両クラスでの優勝経験を持つ。現在も国内外のレースで活躍している。2019年より前澤友作スーパーカープロジェクトのメンバーとしての活動もスタート。

スーパーカープロジェクトに期待する車文化とその未来

イノウエ

メディアでも拝見したんですが、ZOZOの前澤社長のスーパーカープロジェクトに参加されているそうですね。

横溝選手

はい、「新しい車文化を創っていく」「子どもたちに夢と希望を」というビジョンに共感し、プロジェクトマネージャーとして参加させてもらっています。

イノウエ

子供達との活動に力を入れていますね。

横溝選手

子供達には大きな希望を持って欲しいし、車好きの人達ともこれから楽しいイベントで盛り上がっていきたいと思っています。
あとは、ここまで育ててもらった自動車業界に恩返しをしたい気持ちがあるんですよね。

イノウエ

レーシングドライバーが来ると聞くと、一般の方でも行ってみようと思いますね。

横溝選手

大好きなスポーツカーやレースの魅力に共感して、モータースポーツのファンになってくれたら嬉しいですね。

イノウエ

具体的にはどんなことをされているんですか?

横溝選手

少し前に、前澤社長が所有しているブガッティという3億円以上する車で、時速400キロも出るような車があるんですけど、その車を小学校や幼稚園に運び子供達に見てもらいました。

イノウエ

そんな価格で販売されている車の存在に驚きますが、そんな車を近くで観れるなんて羨ましいです(笑)
子供達の反応は良かったんですか?

横溝選手

それが実は、めちゃくちゃ不安だったんです。
子供達が実際に見てもあまり喜んでくれないかもしれないと…
でも、実際に車が登場すると、みんな目を輝かせて喜んでくれて、本当に心から喜んでくれているのが伝わってきました。

イノウエ

車にあまり詳しくない子供達でも、すごい車だってわかるんですね。

横溝選手

やはり、子供には本物を見分ける力があるんだと実感しました。
僕は車が仕事なのでこの活動をしていますが、車だけではなく、子供達には、出来る限り“本物”に触れられる環境を作るべきだと思うんですよ。

イノウエ

本物に触れ、良いものを肌で感じること、その感性を大切にしてもらいたいですね。

横溝選手

そうですね…どんな人でも生まれ持った感性ってあると思うんですよ。
子供達を見ていると特にね、みんな興味津々なんですよ。
だから大人になって触れるものが増えても、本物に触れることで思い出すことができるんじゃないかなと思います。

「一生懸命になれる好きなこと」を見つける

横溝選手

僕は両親がレース好きだったこともあって、モータースポーツに関わるようになりました。
でも、たまたま一生懸命になれる好きなことを見つけ、夢中になれただけなんです。
ですから広くレースの魅力を伝えることで、誰かが一生懸命になれる好きなことを見つけるきっかけになれたらと思っています。スーパーカープロジェクトもその1つですね。

イノウエ

好きなことであれば一生懸命になれますね。
それに、好きなことだから時間を忘れたように、夢中になってしまうことがありますね。

横溝選手

車に限らずですが、一生懸命になれる好きなことを見つけて夢中になってくれれば嬉しいなと思っています。これは前澤社長の思いでもあり、このプロジェクトを通じて学ばせてもらった事です。

イノウエ

モータースポーツビジネスを支える、次の世代のための教育や普及という意味合いもありそうですけど
レーシングドライバーとして子供達に伝えていることはありますか?

横溝選手

「成功の反対は失敗ではなく、何もしないこと」というのがいつも伝えている言葉です。
とにかく挑戦しなければ何も始まりません。
ですから、まずは好きなことを見つけるために、とにかく挑戦をしてもらいたい。
そして、夢中になれる何かを見つけて欲しいと思います。

イノウエ

一歩前に踏み出したくなるような言葉ですね。
僕もそうですが、大人こそ失敗を恐れ、何もしないという選択をしてしまうことが多い気がします。

横溝選手

そうなんですよね。勝負に「たられば」は絶対にありませんが、「たられば」を考えられないと次の勝利はないと思っています。
僕は、負けた時にこそ「たられば」を考えて、次のチャンスに望んでいます。
普通は過去のことを考えないと思われがちですが、過去から学ぶべきことはたくさんあるので、反省するという意味で振り返りは必要ですね。

イノウエ

なんだか、ビジネスにおけるPDCAサイクルの様な話ですね(笑)

速さ、カッコよさへの憧れはDNAに刷り込まれている

イノウエ

車が好きな人って本当に大好きですなんですね。

横溝選手

僕の若い頃、もう少し上の世代かな。
その頃は、自動車がモテるアイテムの一つだった。
だから、純粋にかっこいい車に乗りたいと思っていました。

イノウエ

車でデートとかですね。

横溝選手

かっこいい車を見るとテンションが上がりますよね。男のロマンみたいな(笑)
その感覚を共有できるきっかけを沢山作っていけたらと思っています。

イノウエ

かっこいい車が欲しいから頑張れるみたいな、モチベーションの一つにもなれるものなんですね。
時代が変わっても、そのかっこよさって変わらないですか?

横溝選手

そうですね、戦国時代の移動手段と言えば、馬だったんですが。
誰もが、速くて、かっこいい、美しい馬に乗りたがったそうです。

イノウエ

聞いたことあります。
織田信長は100頭くらい所有していたそうですね。

横溝選手

そうなんですよ。
現代では、車という乗り物に乗るようになりましたが、速さに対する欲求というのは、DNAに刷り込まれる様に引き継がれてきていると思いますね。
かっこ良くて・美しい馬が車に変わっても、そこへ憧れる気持ちは現代でも変わらないと思います。

車はなくならない!これからの自動車ビジネス

イノウエ

自動車の未来についてはどのように考えていますか?

横溝選手

まず、「車はなくならない」と考えています。
自動車のニーズについて話題になることが多々ありますが、様々なシステムを組み込むことによって、必要とされる存在であり続けると思っています。
例えば、自動運転システムの開発が進んでいますね。楽に、安全に運転出来るというのはとても良いことじゃないですか。

イノウエ

クルーズコントロールや自動ブレーキ装置など、かなり精度が高くなってきていますよね。

横溝選手

そうですね。精度はこれからもっと向上していくと思います。
先日、サロン・アンテルナショナル・ド・ロトというスイスのジュネーブで毎年行われるモーターショーを見に行ったのですが、既にハンドルが付いていない自動車も展示されていたんですよ。

イノウエ

ハンドルがない?
つまり、運転しなくてもよくなるんですか?

横溝選手

そうですね。だからこそ、運転する技術、ドライバーとしての技術は、より貴重なモノになるかもしれません。

イノウエ

自動車とレースのこれからについて、熱いお話を聞かせていただきありがとうございました。

横溝選手

こちらこそ、業界のことをお話できる機会をいただきありがとうございました。

まとめ

「本物に触れてほしい」「一生懸命になれる好きなものを見つけて欲しい」という言葉には、未来を担う子ども達への愛情が溢れていました。
そしてプロフェッショナルレーシングドライバーとして、新しいモータースポーツの時代を支えていこうという横溝選手の覚悟も感じたインタビューでした。

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