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【COEDO】から世界で親しまれるクラフトビールは、ブルワーの数だけ創造される

ヒト 2020.03.31 by G-lip E 編集部

前編では、『COEDO』ブランドの軌道や地域農業に根ざした取り組みを伺いました。自由な発想とバリエーションの豊富さが魅力のクラフトビールですが、そのオリジナル感は、クラフトビールのみが表現できるビールの楽しさです。

 

その醸造を支えるのは、ブルワーと称する、個々のスタイルをビールで表現し続ける”ビール職人”です。

 

本企画では、日々新たなビールを創造するCOEDOのブルワーさんに注目し、ビール造りを通じ得られるもの、ビールを通して表現したいこと、そして作りたいビールとは何か。

COEDOで働く若手ブルワー、似内さんから伺いました。

 

生産者であり表現者である、ブルワーが造り出すクラフトビールについて、理解を深めることができる内容になっています。

 

 

<インタビュアー/イノウエ、からすけ>

醸造学校が無い日本で活躍する COEDOの隠れた若手醸造者

イノウエ

COEDOのブルワーさんに直接お話を伺えるということで、よろしくお願いします!

似内さん

似内(にたない)です、よろしくお願いします。

イノウエ

似内さんとても若そうに見えるんですが、失礼ですけどおいくつですか?

似内さん

今は26歳ですね。新卒でコエドブルワリーの職人になったんですけど、今がちょうど4年目になります。

本名:似内杉人(にたないあきと) 1993年東京都生まれ。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科卒。 学生時代、微生物や発酵食品について学ぶ中でビールに興味を持ち始め、バイト代の大半をビールに費やす生活を送っていた。 卒業後は、COEDOブルワリーに入社し、ビールの世界に飛び込む。普段はビールのろ過作業を担当するかたわら、限定ビールの製造や定番商品の安定化などにも携わっている。

イノウエ

ブルワーさんとしてまだまだお若いと思うのですが、新卒でブルワーさんになろうと思ったきっかけはあるんですか?

似内さん

元々大学で「発酵」に関することを研究しておりまして、発酵食品に興味があったんです。

発酵食品というと、日本酒や醤油、味噌などいろいろあるんですけど、その中でもビールに興味を持ったのがきっかけですね。

イノウエ

なるほど…。ビールメーカーは大手さん含めほかにもたくさんあると思うんですけど、なぜCOEDOを選んだのですか。

似内さん

実は、大手メーカーさんも含めていくつかのブルワリーを見させていただいたんです。

でもその中で、COEDOのビール造りに対する姿勢だったり、公式サイトや朝霧社長のインタビューを見て、地元に1番密着しているところが魅力的に感じて、ここで働きたいと思ったんです。

イノウエ

COEDOのビール造りに対する姿勢ですね、先ほど朝霧さんから伺いました。

でも、元々はビールがお好きでブルワーになることを目指したんですよね?

似内さん

ビールが特別好きではなかったのですが、ほかのお酒よりビールが自分には合ってるのかなと思って、色々飲んでいるうちにビールを造ることに興味が出てきたんです。

イノウエ

でも、日本ってブルワーさんになるための学校が無いと思うんです。それでも目指されたのが凄いなと思って…。

似内さん

そうですね、アメリカにはあるんですけどね。

イノウエ

そうですよね。国内で聞いたことが無いですもん。そんな中で若い方が珍しく感じて。周りには若い方もいらっしゃるんですか?

似内さん

COEDOだとブルワーは9名いて、自分が入社した4年前は全国的に少ない印象でしたけど、ここ1、2年で増えてきましたね。当時は僕より年上の方が多かったんですけど、最近は同年代の方が各地で出てきたように感じます。

それでもまだまだ人数は少ないと感じるそう…

似内さん

やっぱり、ブルワーになる方法が分からない方が多いんじゃないかと思いますね。僕もそうでした。

ブルワリー(醸造所)の絶対数も少ないですし、求人も出ない。あっても人づてで募集していることが多いんです。

イノウエ

確かに求人を見たこともない…。

では通常の就職活動の方法だと、苦労したんじゃないですか?

似内さん

いわゆる就活みたいなやり方だと、そもそも見つからないので、片っ端から電話をかけて、やっと求人が見つかる感じでした(笑)。

それでも電話して回って、面接まで進めたのが3社だけ。その中の1社がCOEDOで、今こうやってブルワーとして働かせていただいてます。

COEDOの社風が挑戦しやすい ブランドイメージを守り自らのこだわりをビールに込める

イノウエ

COEDOビールでは、似内さんが作りたいスタイルのビール開発に挑戦できる機会は多いのでしょうか?

似内さん

割と自由な雰囲気なので、自分の作りたいビールには挑戦させてもらってますね。この前も、週末に行ったビアバーで飲んだ味を思い出して自分で再現したり。

社長が色んなことに挑戦させてくださるので、造れば造るほど学びになっています。

イノウエ

週末に飲んだビールの味を再現ですか…。

似内さんはどんなスタイルというか、ビールを目指してるんですか?

似内さん

スタイルは特に決めてないんですけど、自分の作りたいビールはおかわりしたくなるビールですね。一杯だけじゃなくて、2杯、3杯と飲みたくなるような、そんなビールを作りたくて。

アメリカとかイギリスに行くと海外のブルワーから学ぶことが多いですけど、現地のブルワリーさん見てると、まだまだ知らないことばっかりです。

イノウエ

海外のブルワリーへは、研修というか醸造方法を学びに行ったりする機会もあるんですか?

似内さん

会社の研修があるんですが、僕は動けるなら個人で行っちゃいますね(笑)。

会社は製造のスケジュールもありますし、すぐに行けるわけではないですから。僕は待つのが苦手なので、休みが取りやすい時期を見計って動いちゃおうかなって。

イノウエ

ビールに対する熱量がすごいですね!

やっぱり海外の醸造方法は、日本と全然違ったり、学ぶことが多いんでしょうか。

似内さん

海外のビールって、ホップの使い方が独特だったり、フルーツをたくさん使ってるのにバランスがとれてたりして、学びばかりなんですね。

それに海外のビールって、作り手の考えが商品にすごい出てるんですよ。「この組み合わせありなの?」って思うようなものもあったり。まあそれがクラフトビールの魅力なので、楽しくなっちゃいますよね

イノウエ

「クラフト」は職人の個性が詰まったという意味ですね。

似内さん

そうですね。自分は発酵食品について学んできたこともあって、ビールを造る発想の1つに『米麹』を使ったビールを考えてるんですけど、日本の発酵の文化みたいなところをうまくビールに取り入れて、世界に伝えていきたいなと思いますね。

COEDOブランドとブルワーが表現する 2つのこだわりから生まれるクラフトビール

イノウエ

やっぱりCOEDOで働く他のブルワーさんにも、それぞれ職人としてのこだわりがあると思うんですね。

例えば、似内さんの場合は、おかわりしたくなるビールや、米麹を使ったビールといったように。

似内さん

そうですね。でもCOEDOはブランドイメージをとても大切にしているので、そのイメージを崩さないよう、みんな奇抜すぎない商品開発を心がけていると思います。

イノウエ

奇抜な味ですか?

似内さん

はい、1つの味に特化しているようなビールですね。COEDOは味のバランスがいいっていわれていて、バランスのいいビールを依頼されるんです。

自分もそこを目指しつつ、やったことのない「プラスα」の価値を追加してみて、じゃあ次はどうしようかな?って考えて造ってます。

イノウエ

ビールの飲みやすさが、COEDOのブランドイメージとして定着しているんですね。

似内さんが”プラスα”する価値というのはなんですか?

似内さん

普段から使ってるホップじゃなくて、全く使ったことのないようなホップやイーストでビール作ることで、プラスαの価値を加えてますね。

それでもどんな醸造にも共通することは、COEDOブランドとして販売することをイメージしながら造ることです。

イノウエ

確かに、先ほど仰っていた様に、ブランドのイメージってありますもんね。

似内さん

そう。なので、ブランドイメージと自分のこだわり、そのすり合わせをしながら、COEDOブランドを冠したビールの中に自分を表現する方法を模索しなければならないんです。

イノウエ

ビールの味やフレーバーというのは、数値的なデータで記録できたり、再現性高く表現できるものなんですか?

似内さん

数値でも出せるんですけど、発酵が何日目でどんな味か、1週間たったらどう変わってくるのかとか、そこは機械だとできない部分なので。本当に感覚になっちゃいますね。

イノウエ

え、発酵日数が2・3日違っても味は変わってしまうんですか?

似内さん

2・3日でも変わるものは結構変わっちゃいますね。

イノウエ

やはり、発酵段階で2・3日の間に変化する味を見極めることができるのは、ブルワーさんだからこそわかる職人技というか、感覚なんだと思うんですね。

似内さん

普段から製造工程を見ながらビールを飲んでますし、休みの日はビアバーやビアパブで色々飲んだりしているので、違いが分かるようになってきましたね。

他のビールを飲んでも、IPAのように特徴のある味なら、使っているホップの種類が多少はわかります。

一杯のビールにかける想いから得られるものとは

イノウエ

ビール職人として、ビール造りを通じて得られるものはありますか?

似内さん

ビールを作品として、それを飲んだ人が「おいしい」って反応してくれたら、自分のビール造りの構成としては、間違ってなかったのかなと確認できるところですね。

イノウエ

お客さんからのフィードバックは嬉しいですね。

似内さん

あとは、会社に土台となるノウハウを蓄積することですね。例えば限定ビール作りでもそうですが、誰かが似たような醸造をやりたいってなったときに、自分のノウハウを参考にして、次のステップへ進んでくれればと思います。

イノウエ

会社にノウハウを残すことは大切ですよね。

ちなみに、この時期の限定ビールってどんなフレーバーなんですか?

似内さん

毎年冬限定で作る、かぼちゃのビールがあるんです。今年でもう4回目で、自分含めて今まで造ってきた人のノウハウを、今年の担当に伝えてあげるんですよ。

かぼちゃをどのタイミングで入れると風味がどうなるか、量をどのくらい入れたらどんな味になるか、みたいなことをやってブラッシュアップしていきますね。

イノウエ

かぼちゃとビールなんて想像ができない味ですね…。

似内さん

これが美味しいんですよ(笑)。かぼちゃビールを飲んだお客さんの反応や作り方のノウハウは、さらなるブラッシュアップのために、会社の知見として蓄積しています。

そうやって培ってきたものと、自分の造りたいビールの方向性を重ね合わせて、COEDOとしてお客さんに楽しんでもらえるビール造りが大切だと思いますね。

イノウエ

COEDOビールを通して、自らの成長にも役立ってますね。

似内さん

ビール造りを通じて、新たな気付きや発見を得られていますね。

イノウエ

それがビール職人として、似内さんが大切にしている価値観なんでしょうか。

似内さん

『ビール造りは楽しいもの』だと思っていて、自分の造りたいように、やりたいことをやった方がいいですよね。

ちろんその上で、会社の方向性とすり合わせながら、自由なビール造りをしていきたいですね。

まとめ

会社のこだわりを守り抜くだけでなく、職人のこだわりを貫きとおすだけでもない。

両方のこだわりをすり合わせた先にこそ、お客さまの喜ぶ顔があるのだと、似内さんは教えてくれました。

 

会社から学び、自らも学び、それを商品として結晶化する。

COEDOビールのクラフトマンは、まさにクラフト(手作り)ビールという言葉を表したような価値観を持っています。

 

こだわりや知識は、正しい方向性を身に付けているからこそ使いこなせる。日々の業務から学び続ける姿勢があってこそ、その先のビジョンが見えるのかもしれませんね。

 

 

<ライティング/からすけ>
<編集/イノウエ>
<撮影/九鬼>

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