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【横浜ベイブルーイング】醸造家 鈴木真也がクラフトビールに興味を持ち、世界一を狙う行動力

ヒト 2020.02.21 by G-lip E 編集部

クラフトビールとは一般的に「手づくりビール」や「工芸品的なビール」などと表現されます。それは、小規模・独立・伝統を重んじながら自らの個性やこだわりを表現し、この世にたった1本の味や香を造りだす、醸造家の個性溢れるこだわりの世界です。
そんなオンリーワン、クラフトビールをつくる醸造家の人柄や素顔はどのようなものなのでしょうか?
前編に続き、ピルスナーの本場チェコのビアコンペでアジア初の金賞を受賞するなど、日本のクラフトビール業界をけん引する存在である若手醸造家『横浜ベイブルーイング株式会社』代表取締役 醸造責任者 鈴木真也さんに、ブルワーを目指したきっかけや、醸造に対するこだわりを伺うと、全てにおいて「行動力」という共通点があることがわかりました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

ある番組を観てから、23歳でビールを作ることに興味を持った

イノウエ

クラフトビール職人ということで、どんなこだわりを持っているのか気になっていて、鈴木さんがクラフトビール職人を目指されたきっかけはなんですか?

鈴木さん

大学を卒業してから初めは違う仕事をしてたんですけど。その頃、たまたまテレビでやっていたのが、1人のドイツ人が小さなビール工場で、ビールを作る番組で。

その時に「こんな世界あるんだ」とはじめて知って、自分もやってみたいと思ったのがきっかけですね。

イノウエ

すごい決断をしましたね…。その時は、何歳だったんですか?

鈴木さん

その時が、23歳です。

本名:鈴木 真也(すずき しんや)横浜ベイブルーイング株式会社 代表取締役 醸造責任者。横浜生まれ。拓殖大学卒業/工業デザイン科卒。配送業を経て醸造所19社へ直談判の末に『横浜ビール醸造所』に入社。30歳で独立開業し、現在、横浜市内(関内/戸塚)に直営ビアパブを経営。2012年に醸造免許取得。2016年7月に横浜市戸塚区に新工場を設立、ビール醸造を開始する。2014年『THE GOLD BREWER’S SEAL』のMicrobrewery special light beer部門にて世界36銘柄を押さえアジア初の金賞受賞。

イノウエ

23歳で大学を卒業してすぐに興味を持ち、そこから先はどのように、職人への道を歩まれたんですか?

鈴木さん

ビール職人になろうって決めたのはいいんですけど、国内のブルワリーがなかなか見つからなくて。だから醸造所に関する本を買って、とにかく端から「工場を見学させてください」って電話をかけてました。

イノウエ

当時は、求人サイトのような、募集ページはなかったんですか?

鈴木さん

狭い世界で、どこも表だってスタッフを募集しているわけではなかったので、見学した後に「実はブルーワ目指してるんですって…」感じで。履歴書を置いてくることを繰り返してました。

イノウエ

面白いアプローチですね(笑)。

鈴木さん

なかには、横浜から宇都宮まで自転車で行ったこともあったり、全然苦じゃなかったんですけどね、19社くらい回って、内定をもらうことができました。それが今の原点になっている、6年ほどお世話になった「横浜ビール醸造所」で、そこから独立した流れになりますね。

ビールが大好きだから、自分が作りたいビールの為なら言語の壁は関係ない

イノウエ

自転車で宇都宮まで…物凄い行動力。

横浜ビールさんを退職されてから、独立を果たしたのは何年くらいですか?

鈴木さん

独立したのは2011年で、当時はまだ自分の工場を持つことが出来なかったんで、知り合いの工場の一部を借りて作るような状況だったんです。

イノウエ

この、光っている樽も高そうですね…。

鈴木さんはたしか2014年にチェコの『GOLD BREWRRS SEAL』という大会で、金賞を受賞されていますね。

鈴木さん

独立から3年目にいただいたものですね。

僕が目指しているピルスナーの製法を学ぶには、日本だと限界があって、本場であるチェコ産のピルスナーを超えるためにも現地で学ぶことが必要で、酵母をどの状態で使って、ホップをどのようなタイミングで入れて、ホップのアロマの特製や違いなど、3週間休み取ってチェコに行ってきたんですよ。

イノウエ

3週間という短期間で習得できるものなんですか?

鈴木さん

ビール造りの基礎が分かっていれば、他の工場行っても得るものが多くて、自分の工場との違いがすぐに分かります。基礎がわかっていて、学びに行くので3週間あれば十分ですね。

イノウエ

海外へ学びに行くことは、ブルワーさんにとって一般的ということですか?

鈴木さん

国によっても違うと思いますけど、僕も日本から見学にきたブルワーにレシピも教えたり。海外のビール工場では見学者に対して、レシピも教えていただけたり、基本的にはウェルカムなんですよ。ただ、レシピを公開しない国もありますけどね。

イノウエ

その国、気になります(笑)。

鈴木さん

ベルギーなんですけど。周りと比べてちょっと秘密主義なんです。

でも、仲良くなると、やっぱり教えてくれるんですよ。

イノウエ

ベルギービールの隠されたレシピ…(笑)。

日本のビール職人が海外へ学びに行くのも、一般的ということですか?

鈴木さん

アメリカではヨーロッパへ学びに行くブルワーが多いと聞きますけど、日本人で海外へ学びにいく人は、まだまだ少ないみたいですね。

イノウエ

そうなんですか?

鈴木さん

英語がしゃべれないとか…けっこうくだらない理由で踏みとどまる人が多くて。

僕は英語ができるわけじゃないですけど、勢いで行っちゃいますね(笑)。

イノウエ

僕も、足踏みするタイプなので気持ちがわかります(笑)。

鈴木さん

それに、海外のブルワーは僕より年齢層が低くて。例えばチェコは、16~17歳で醸造学校に入って、卒業しないとビール職人になれないので、20歳にならないとお酒が飲めない日本とは文化が違うので、ビール職人になるのも難しいですよね。

イノウエ

鈴木さんのビールにかける情熱は、一体どこから生まれているんですか?!

鈴木さん

自分の知らない醸造方法があって、それに出会える喜びと造りたい欲求ですね。

世界最高峰『World Beer Cup』にかける想い

イノウエ

まだ知らない醸造方法や、作りたい欲求の根元となっている、ビールを作り続ける為のモチベーションはなんでしょうか?

鈴木さん

今はアメリカで2年に1度開催される『World Beer Cup』(ワールド・ビア・カップ)で30代のうちに賞を取るという目標があって、来年が最後になるので、なんとしても獲りたいですね。

イノウエ

それは、ビールのワールドカップみたいな大会ですか?

鈴木さん

そう。参加するブルワーの国籍や人数が世界で最も多い大会だから権威もあって。2018年は審査員が380名くらいで。そのうち40%くらいがアメリカ人で、日本人が10人くらいだったんですけど。僕は、自分のビールを審査に出品しながら、日本代表の審査員としても参加した大会なんですよ。

イノウエ

え、審査員と出品者は同時にエントリーできるんですか?

鈴木さん

審査員は自分の出品カテゴリーを除いて、審査することができるようになっていて。1つの醸造所からは、4種類しか審査にエントリーできないので、僕が審査にエントリーしたピルスナー部門を除き、審査員として参加しました。

イノウエ

なるほど、4種類の中で自分がエントリーしていない部門で審査員をやられたんですね。でも、審査員はどうやって選ばれるんですか?

鈴木さん

審査員になるためには、英語でのディスカッションと筆記ができなければならないんですが。運営側から打診があるか、既に審査員として登録されている3名からの、英語で書かれた推薦状が必要になってますね。

イノウエ

選ばれし審査員だけが、世界中のビールを審査できるんだ…。

過去の大会から、鈴木さんがエントリーしたビールの中で、手応えを感じたビールは何位くらいだったんですか?

鈴木さん

2018年は1品だけ、1回戦をクリアしたんですけど、その後の順位は教えてもらえなくて。もしかしたら、2回戦の最初で負けているかも知れないし入賞できない4位だったかもしれない。その時は自信があったピルスナーが1回戦落ちてしまったので、残念でしたね。

イノウエ

自分が自信持ってエントリーしたビールと、実際に評価されるビールは違うんですね。

鈴木さん

あとは、今の工場だと設備的な問題もあって。ワールド・ビア・カップは、瓶詰めをしてから2ヶ月間、倉庫で保管しなければならないというルールがあるので、通常の審査会とは少し異なっていて。2ヶ月で劣化してしまうビールは品質的にも認められないんですね。

イノウエ

2ヶ月で味が変わってしまうということですか⁈!

鈴木さん

そうです。僕が試飲している中でも「何でこんな不味いビールが入ってんだ」って思うビールに、1回戦目の審査ではよく当たりました。

それでも、そのビールも初めは美味しかったと思うんですよ。瓶詰めした後に、ボトルに入っている少しの酸素が悪い働きをして酸化したりしてしまうと、2ヶ月の間に不味くなったりするんですよね。

イノウエ

生モノみたいに、品質が重要なんですね。

鈴木さん

結構シビアな環境なので。気を遣って瓶詰めしたり、その為にも精度や耐久性を高める必要があって、設備も入れ替えなくちゃならなかったり、難しい問題もありますね。

イノウエ

品質を一定に保つことができたビールのみが世界の舞台で評価されるんだ…。

ということは、缶ビールであっても1日でも早く飲んだ方が、美味しく飲めるということですか?

鈴木さん

そうですね。長期熟成ビールを除いては、1日でも早く飲んだ方が美味しいと思います。

イノウエ

なるほど…。明日から、ビール買い溜めするのは辞めよう。

まとめ

我々が、普段飲んでいるクラフトビールは、造り手の想いやビールに秘められたこだわりなど、それらの情報を知る機会は滅多にないのではないでしょうか?
取材を通じ、横浜という地から、1人のビール職人が世界を舞台に、まだ知らない醸造方法を求め、世界を駆け巡りながら自分が造りたいビールを目指し、醸造していることがわかりました。
世界の舞台で認めさせるために「やれることはすべてやる」、言葉の壁さえも物ともせず、行動を続けるのは簡単なことではないと思います。
少しでも興味を持ったことに全力で取り組み続けることで、未だ観ぬ世界に繰り出すチャンスを、掴みとることができるかもしれません。

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