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G-lip 男の“気になる”を刺激するメディア

通勤でのストレスを避け、フィットネスや運動不足の解消に繋がる自転車通勤の魅力

ヒト 2019.12.06 by G-lip E 編集部

学生から社会人になると、移動手段が大きく変わり、自転車を乗る機会が減ってしまう方が多いと思います。

主な通勤手段は車や電車となり、渋滞や遅延、満員電車でのストレスを抱えてしまうことも少なくありません。

しかし、自転車に乗ることは身体への負担が少ないのにもかかわらず、消費カロリーが高い運動であり、エコにも繋がる移動手段ということは、あまり知られていません。

そこで、自転車通勤の草分けとして、自転車通勤に関する書籍などを出版しながら、自転車ツーキニストとして活動をする疋田智さんに、自転車通勤についてのこだわり、魅力などを伺ってみました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

自転車通勤を始めたきっかけはバブル崩壊

イノウエ

大学を卒業されてから、TBSに入社して、どこに自転車通勤を始めたきっかけがあったんですか?

疋田さん

自転車通勤を始めた時は、「筑紫哲也ニュース23」という番組にいましてね。96年頃。

番組が終わって、反省会があって、帰宅するのは午前2時頃だったんです。

本名・疋田 智(ひきた・さとし)1966年宮崎県生まれ。
東京大学文学部美学藝術学科卒。同大大学院工学系研究科都市工学科修了。自宅から会社までの通勤に自転車を使う“自転車ツーキニスト”の草分けとして、自転車の乗り方、楽しみ方、理想的な都市交通のあり方などを論ずる。NPO法人自転車活用推進研究会理事、学習院大学生涯学習センター非常勤講師。TBS情報制作局プロデューサー。自転車関連の著作に「新自転車“道交法”BOOK」(枻出版社)「ものぐさ自転車の悦楽」(マガジンハウス)「自転車ツーキニスト」(光文社知恵の森文庫)「自転車生活の愉しみ」(朝日文庫)など30冊程を出版。

疋田さん

で、深夜宅送のタクシーが出るんですけどね。

イノウエ

乗り合いタクシーですね。

疋田さん

そう、ああいうの、知り合いだったら喋りながら帰ればいいし、まったく知らない人なら無言のまま帰ればいいんだけど、車内に一緒乗る人って、なんとなく知ってるけど、なんとなく知らないという感じじゃないですか。

イノウエ

職場で見たことあるけど、喋ったことはないという人ですか?

疋田さん

そうそう。で、車内は気詰まりな感じでずーっといるわけ。それがすっごく苦手で。 今だったらスマホでも眺めてればいいかもしれないけど、当時はスマホ無かったから車内は真っ暗で、本なんか読めないし、じーっと暗い箱の中に閉じ込められる感じで、あっち行って、こっち寄って帰るという日々だったわけですよ(笑)。

イノウエ

まだ携帯でWebサイト見ることができなかった時代ですよね。

疋田さん

そうそう。それをね、自転車に変えたら、速いし、適度に疲れるから帰ったらすぐ眠れて、いいことばっかだったんですよ。

イノウエ

なるほど!もともと自転車は好きだったんですか?

疋田さん

もともと自転車少年だったんで、好きは好きだったんですね。で、ブリヂストンの「ユーラシア」っていう自転車に乗ってたんですけど、会社入って、しばらく乗らない日々が続いて。マンションの地下駐輪場にほったらかしになってたんですよ。ホコリだらけで空気も抜けてて(笑)。

イノウエ

全然乗らなかったんですね(笑)。

疋田さん

当時若手のディレクター時代だったから忙しくて乗る暇なんてないの。で、ちょうどその頃、マンションの住民総会で、「汚い自転車は捨ててしまいましょう」ってことになって、これまずいと思って、タイヤも他の部品も変えて、磨き直してみたら、結構かっこいいじゃん自分の自転車って(笑)。

サラリーマンは自転車通勤で運動不足を解消できる

イノウエ

それで直した自転車を乗るために、通勤に使ってみたんですね!

疋田さん

そう、通勤に使えば毎日乗れるなと思ったの。これが一番最初の自転車通勤で。

あの頃は、玄関から会社までは徒歩と電車で50分ぐらいだったから。自転車だとどのくらいかな、2時間ぐらいかかるんじゃないかなと思って、とりあえずやってみたの。

イノウエ

どんぶり勘定過ぎませんか(笑)。

疋田さん

そしたら、2時間どころか40分ぐらいで着いちゃうわけ。「あれ?電車より、自転車のほうが速いの?」って。

それでだんだん近道がわかってくると、35分くらいで行けるし、帰りは乗り合いタクシー乗らなくて済むし、こりゃいいわいと。

イノウエ

電車より早くて、帰りも都合が良かったんですね。

でも、雨の日は困りませんでしたか?

疋田さん

雨の日は電車で行きますよ。だから「行きが晴れてて帰りが雨」ってのが一番困るの(笑)。でも、雨は平均すると1週間に1回ぐらいで、週6日出かけるとして、5日は晴れてます。だからそれぐらいならもう我慢して、電車乗ってたんですけど。ま、天気予報には敏感になります。

でも、それ以上にメリットがあって、自転車通勤はまず速いでしょ。それから運動になって痩せるし、街の表情や季節感もよくわかるようになるし、お金もかからないから!

イノウエ

メリットばかりのような気がしますけど。

スーツでは、汗の問題とか気になってしまいます…

疋田さん

ああ、真夏はね、汗びっしょりになりますよ(笑)。

でも、テレビ局に勤めてると普段はポロシャツ1枚で、スーツ着なくていいから、夏はポロシャツをカバンの中にしまってTシャツ1枚で行って、会社のトイレで着替えて。ってやってました。

イノウエ

それでも、スーツを着なければならない場面とかありませんか?

疋田さん

スーツはね、会社のロッカーに一式だけは置いているんですよ。

イノウエ

置きっぱなしですか(笑)。

でも、ほとんどのサラリーマンはスーツで通勤する方が多いような気がします。

疋田さん

自転車ツーキニストって、スーツ仕事の人も結構いますよ。通勤距離が10km以上になる人は、スーツはもう会社に置いて、ワイシャツとスラックスを背中のバッグに入れて、レーパンとジャージで来るんですって。それでトイレで着替えてるのかな。

イノウエ

ああ、そうなると会社の環境にも左右されそうですね。

ところで、疋田さんは自転車通勤をはじめて、どのくらい痩せたんでしょうか? 

疋田さん

1年間で17kg痩せて。84kgあったのが67kgに。いや、普通に食べてたんですけどね。で、あれから20年経ちましたけど、リバウンドなしだから、運動強度が高いフィットネスなんですよ。

イノウエ

自転車で通勤するだけで、消費カロリーも増やすことができるんですね。
ご結婚とか転勤をすると、引越しをして、通勤距離が遠くなってしまった時には、どうするんですか?

疋田さん

そう、引越すんですよ。当時自転車通勤を始めた時は、片道12.5kmくらいあったんですけど。私の場合、逆にその後、何回か引越すごとに会社が近くなって、太り始めるという(笑)。江東区に住んでたときが一番痩せてましたね。

今は麻布から赤坂という距離なので、いわばとなり町。わずか2.5km。もう自転車ツーキニストと名乗るには恥ずかしい限りです。

これから自転車通勤をする人は何から始めるべき?

イノウエ

そうなると、職場と自宅の距離が離れている方が、適度な運動になりそうですね(笑)。

これからロードバイクに乗る人や、通勤を考えてる方はなにから始めれば良いでしょうか?

疋田さん

私が一番最初におすすめするのは、必ずクロスバイクなの。

ママチャリしか乗ったことがない人っていうのがほとんどだから、いきなりロードバイクではなく、まずはクロスバイクをおすすめしますね。

イノウエ

あまり詳しく知らないんですけど、この本を読んでみたところロードバイクとクロスバイクの違いは、ハンドルが違うということですかね?

疋田さん

そう、これこれ、ハンドルがまっすぐなフラットハンドルなんですよ。

イノウエ

どうして、いきなりロードバイクではなく、クロスバイクなんでしょうか。

ロードバイクに乗りたいのに、クロスバイクから始めると、二度手間のような気がしてしまって…

疋田さん

クロスバイクがロードバイクと違うのは、ハンドルがフラットバーという以外に、タイヤが太目でしょ?
だから乗り心地がいいんですよ。

イノウエ

乗車ポジションもロードバイクほど前傾姿勢じゃないですね。だからクロスバイクの方が乗り心地が良いということですか?

疋田さん

そうそう、あとはロードバイクに付いているドロップハンドルってのは変速とか、ブレーキにちょっと慣れが必要で、フラットハンドルみたいにフレンドリーじゃないんでね。

あとは、サドルを見るとわかりますけど、ロードバイクのカッチカチではなくて、クロスバイクはサドルが軟らかくて、ちょっと太い。すべてにおいて、ロードバイクよりマイルドなんですよ。

イノウエ

じゃあ、初心者というか、これから乗り始める方には、クロスバイクがほんとに乗りやすいんですね。

疋田さん

乗りやすい。乗りやすいのに、ママチャリと比べたらとんでもなくスピードが出るの(笑)。

店内にあるクロスバイクを推してくれました!

海外で流行りのEバイクは通勤に最適?

イノウエ

日本の自転車技術も進歩が凄いようですけど、海外では電動アシスト自転車がブームになっているみたいですね。

疋田さん

そうなんですよ。E-バイクっていうんですけど、ヨーロッパではスポーツバイクの中でもマウンテンバイクに電動アシストが採用されているんです。

イノウエ

スポーツバイクなのにE-バイク?ですか。

※スポーツバイクとは

舗装路を早く走ることに適しているロードバイク、急こう配の砂利道など非舗装路を走破することに適しているマウンテンバイク、2~3泊の旅行に適しているランドナー、ジャンプやアクション(トリック)を目的としたBMXなど、様々な目的別に専用設計された自転車。

疋田さん

そうそう、ヨーロッパでE-バイクがウケてる一番の理由は、マウンテンバイク(MTB)の再ブームってことで、山を登っていく時は電動アシストを利用して、下り坂はアシストを切って気持ちよく降りていく、マウンテンバイクに電動のアシストがついたから山道を楽々楽しめるようになったことなんですよ。

イノウエ

日本でスポーツバイクを始めようかと考えた時に、E-バイクがいいなと思うんですが、乗ったことがないので、どんなメリットがあるのかわからなくて…

疋田さん

一番のメリットはね、私の勝手な印象なんですけど、小さな坂が多い東京が、フラットな街に変わることだと思います。

イノウエ

フラットな街にですか?

疋田さん

そう、坂を軽々登れるわけ。坂登りなんて、ロードバイクだったら別に余裕なんだけど。それを毎日毎日(通勤だったら)、同じような坂を登って下りて、繰り返しでしょ。高低差30メートルしかないんですよ、東京の場合は。そこを細かく登って、降りてって、繰り返すの嫌じゃないですか。E-バイクはそれを平らに、フラットにしてくれるからね(笑)。

イノウエ

たしかに、小さな坂が多いので、歩くときも地味に疲れることがあります…

電動のアシスト機能としては、何km/hくらいまでアシストされるんですか?

疋田さん

アシストは10km/hからだんだん落ちていって、24km/hで切れちゃうんですけど、普通のロードバイクだと25km/h以上で走るのが一般的ですから、普通の道ではほぼアシストいらずです。

イノウエ

じゃあ、ちょっと上り坂がきついなというところだけ電動アシストがかかるということですね。

疋田さん

そう、上りはアシストがかかってくれる。でも下りはかかんない。だから東京は道がフラットになったかのように乗れる(笑)。
こんなにいいものはないですよ。

イノウエ

都内で走る分のメリットは理解できたんですけど、モーターやバッテリーの重さで、車重が重くなりますし、サイクリングロードをずっと走るという人には必要ないですよね?

疋田さん

たとえばツーリングで走る北海道とか、坂のない平坦路を行くのであれば必要ないと思いますよ。

イノウエ

そうなると、都市部に住んでいて街中に坂があって、という人だったら逆にE-バイクのほうが良いということですね。

疋田さん

ラクだし、なにより楽しいですよ。都内に限らず坂の多い都市に合ってるんじゃないかと思います。それと、電動アシストのママチャリは重量が35kgぐらいあるから超重いんだけど。
YPJ(ヤマハが開発したスポーツ自転車ブランド)みたいなスポーツバイクだったら、重量が15kg前後で軽くて、電動アシスト付きなのに速い。そうするとバッテリーもあまり使わず走れるから、さらにバッテリーが小さく軽量にできる。

イノウエ

あ、だからスポーツバイクにモーターを付けても、バッテリーを付けても小さいんですね。車体が軽くてアシストするタイミングが少ないから、小さくしても問題ないんだ。

疋田さん

その通りです。ママチャリだと重量が重すぎて四六時中アシストしないと疲れちゃうからね、バッテリーを大きくして、また車重が重くなるということになるわけです。

日本と海外では、自転車の扱いがまるで違う

イノウエ

車体重量を軽くするメリットはたくさんあるんですね。

そうなると、日本の自転車の市場と海外を比べて、日本は遅れてるんでしょうか。

疋田さん

遅れてるというよりも、日本は独自すぎちゃったんですよね。ヨーロッパと日本を比べると、自転車のあり方が全く違うんですよ。

イノウエ

どういうことですか?

疋田さん

日本は、自転車が歩行者と同等くらいに見られてしまっているでしょ。でも海外では自転車は車と同じ扱いをされているから。今でも日本だと、「自転車はなんとなく歩道を走るもの」ですよね?

イノウエ

たしかに…

疋田さん

でも、例えばオランダだと、車道に自転車専用のレーンもあって。そこを婆さんたちが猛スピードで走ってますからね。その自転車が歩道に入ると滅茶苦茶怒られるんですよ。「なんで自転車が歩道を走ってんだ!」って(笑)。

イノウエ

日本では、自転車が車道も歩道も意識されることは少なくて、道路もまだ専用レーンが少ないですね…

疋田さん

そう、日本では「通ってもいいと法で指定された歩道は通る」としちゃった。いや、実質的に自転車=歩道としてしまった。
これは昭和45年からなんです。でね、そうするとそんなに高性能な自転車はいらないでしょ、だからママチャリでいいやってなった。

イノウエ

安かろう、悪かろうへの道ですね。

疋田さん

それが日本でママチャリが多い理由なんですけど、これこそ日本の自転車の進化を阻んでると思いますね。

イノウエ

つまり、文化の違いということですか?

疋田さん

そう、ヨーロッパに行くと自転車は車道を走ってますからね。
というより、「非歩道」を走っている。その扱いの違いが、この差を生んだんですよね。

自転車通勤でのリスクは間違い?保険に入ろう

イノウエ

でも、やっぱり自転車で通勤することでリスクもある気がしていて。通勤中にパンクしたり事故起こしたり。最近だとイヤホンとか、交通系のトラブルも増えた気がします。

疋田さん

もうね、イヤホンとか信号守らないとかは「ちゃんとしなさい」としかいいようがないんですよ(笑)。
自転車にもちゃんとルールがあるんだから、ルールを守って走れば安全です。

イノウエ

車と同じ、運転手自身の意識の問題ですか…

疋田さん

あとね、自転車の事故が多いというのは誤解で、実は事故はそれほど多くないんですよ。どの乗り物が事故を起こすかというと、最も多いのがオートバイ。その次が車で、次に自転車。だから自転車事故が多いというのは、都市伝説に過ぎない。

イノウエ

そうなんですか?てっきり、自転車事故が多いと思っていました。

疋田さん

これ、会社が自転車通勤を許可するかどうかのときに、よく喋ってくるんですけど、地方では、車通勤が普通じゃないですか。あれ、自転車通勤より事故率がはるかに高いですよ。

車通勤はOKで、自転車通勤はダメというのは、論理的におかしいでしょう。

あと、自転車通勤をする場合、いってみれば車と同じで、自転車保険に入りましょうというのも必要ですね。

イノウエ

いわゆる任意保険ですね。でも自転車保険というのは普及してきてるんですか?

疋田さん

だんだん普及し始めてきてね、東京だと5割近くだと思いますよ。

イノウエ

あまり馴染みのない保険だったんですけど、普及率は5割もあるんですね。

疋田さん

そんなに?と思うでしょ。答えは簡単、車の保険に入ってる人が、数百円で特約を付けちゃうの。しかも家族全員に有効だから、小学生の子供が事故起こしても保険が効くというのがあったりして、お得なんですよ。

イノウエ

でも、車持ってない人は独自で入る必要があるんじゃないですか?

疋田さん

独自の場合はね、年間で5000円ぐらい。自転車保険ってのは基本的に安いんですよ。
あとは、例えば私の場合「自転車活用推進研究会」っていうNPO法人の会員になっているのもあって、ほら会員証。これが保険証にもなってるんですよ。

イノウエ

自転車のNPO法人にも保険があったりするんですね。でも年間5000円なら安い…

疋田さん

あとね、「日本サイクリング協会」も、入ると保険が付いてくるから(現在は保険契約は任意)。
そういう団体に所属するというのも、ひとつの方法ですね。

イノウエ

知らないだけでたくさんあるんですね。その保険は自分だけに適用されるんでしょうか?

疋田さん

うん、自分も相手もOK。

イノウエ

自転車通勤ではまず、保険に関する知識も必要になりそうですし、他の保険と比べても割安なので、加入しない理由が無いですね!

まとめ

自転車通勤は通勤でのストレスや、渋滞にも左右されない移動手段として、注目を集めています。

運動不足の解消やダイエットにも最適で、新しい趣味としても会社の同僚や、恋人とサイクリングなど出かけるなど、コミュニケーションのきっかけとなってくれるかもしれません。

自転車保険も充実してきているので、保険には必ず入り、自分の身の安全も確保することも大切にしてください。

今回取材にご協力いただきました、BEX ISOYAさま
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