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AI発達で仕事は無くならない デザイナーと医師が考えるシンギュラリティの可能性

私たち 2019.11.25 by G-lip E 編集部

「近い将来、”AI”に仕事を奪われる」このような議論が様々なビジネスメディアで触れられるようになり、科学技術やコンピューターサイエンスの発展により「シンギュラリティ」が訪れるとされています。

しかし編集部では、技術的特異点とも訳されるシンギュラリティはすでに、身近になりつつあるのでは?と考えました。
技術・知識・経験が重要な職業である医師(医業)と、感性・閃き・センスが重要な職業であるデザイナー(クリエイター)は、AIの普及にどのような考えを持っているのか。

今回はゴリラクリニックの渋谷院院長である斉藤ドクターと、クリエイティブディレクター・デザイナーの山下憂也さんに、「AI」をテ−マに、それぞれの未来を伺ってきました。

AIの進化で、仕事内容が確実に変化している

山下さん

なんか、こう、「いわゆる未来」な感じのスタジオですね。

斎藤ドクター

ニュース番組みたいで良いですね(笑)。

山下さん

今日は人工知能(AI)の進化で、私たちの仕事にどのような変化が起きるか、ということですね。気になっている人も多いでしょうね。

斉藤ドクター

山下さんのお仕事であるデザインの場合、AIが進化していったら、デザイン作業のどの程度をAIがカバ−できるようになるのでしょうか?

富山県出身。北里大学医学部卒、北里大学病院、国際医療福祉大学熱海病院を経てゴリラクリニックの渋谷院院長を務める。休日も外来・往診など幅広く医療を行う。投資や資産運用が好き。ワインが大好き。

山下さん

デザインやクリエイティブ領域に関するAIも沢山開発され始めています。
画像やパターンをデータ蓄積・解析することで、手書きの風景画をもとに実在しそうな風景写真を作成したり。

斎藤ドクター

それは凄いですね。デザイン業界にもAIによる変化が起き始めているんですね。

山下さん

そうですね。AIは膨大に蓄積されたデ−タから、最適な回答を吐き出すスピ−ドが人間の脳よりも優れています。作業としては圧倒的に効率がいいんですよね。

斉藤ドクター

じゃあ、山下さんの仕事もAIに取って変わることができてしまう?

山下さん

そういう部分もあるかもしれませんね。でもAIが不得意なのは「無」「ゼロ」から生み出すことです。
「感情」や「閃き」はまだまだ人間には追いつけない。あくまで「過去のデータから作り出したもの」で。過去のデータが無いものは作り出せないんですよね。

山下憂也(やましたゆうや) 1979年、神奈川県生まれ。デザインプロダクション、求人広告代理店にて、グラフィックデザイン・アートディレクションに従事。ベンチャー系広告代理店にてクリエイティブディレクター兼 取締役に就任。クライアントの医療法人と合弁で設立したMS法人の取締役に就任し、男性専門の総合美容クリニックであるゴリラクリニックの立ち上げに参画。現在は、美容医療系コンサルティングファームにてゴリラクリニックのクリエイティブディレクターを務める。

斉藤ドクター

絵画や小説、映像作品まで作り出すAIが出てきていますが、それらもゼロから生み出したわけではなく、ディープラーニングで学習した「良い絵画とは」「良い小説とは」「良い映像作品とは」の最適解を出しているだけですね。

山下さん

あくまで、人間が今までゼロから作り出した無数の「良作」を解析し、良作と感じられるパターンを割り出し、それに当てはめて作っているわけです。

AIには優れていて、人間にしかできないコト

斉藤ドクター

AIがゴッホやピカソを真似て描くことはできても、ゴッホやピカソにはなれないということですね。
その上で、どのようなデザイナーがこれから生き残っていくと思いますか?

山下

AIと、どう共存していくかですね。人間もAIと同じく、過去に経験したことを元にアウトプットする生き物だと思うんです。
とはいえ、その経験したことをあえて曲げることによって、何かを感じさせるという入り組んだ表現もできる。その部分では、まだ人間のほうが優れているんじゃないかなと。

斉藤

なるほど。山下さんはどのような工程・作業ならAIに向いていると思いますか?

山下

そうですね、私はAI技術を知り尽くしている訳ではないですけど、たとえば「パス抜き」と呼ばれるような画像を切り抜く作業。現在はPhotoshopのような画像編集アプリケ−ションを使ってやってるんですが、それを完全にボタン1つで完了させられるようになると、だいぶ工程が圧縮できるかなと。
あとは画像の合成。これはまだアプリケ−ションを使っても完全には自動化できないので、そのあたりもクリアになればだいぶ効率化できると思います。

AIが人間を判断し、背景の切り抜きが行うことができるツール『remove.bg』を使用し、実際に切り抜いた画像を比較しています。

斉藤ドクター

作業の部分を任せられたら、他の作業が出来ますよね。

山下さん

今までは1つのものしか生み出せなかったものが、同じ時間で複数作り上げることができるので、その意味ではAIに期待したいですね。医療や医学ではいかがですか?

斉藤ドクター

医者の仕事の中でも「診察」はAIに判断してもらうことは良いかもしれません。
こんなこと言ってたら他の医者に怒られるかもしれないけれど(笑)

山下

「人間の感覚の方が優秀だから」と言われると思っていたので、かなり意外でした。

斉藤

診察では「この人はどういう状況なのか」を把握します。で、「主訴」と言うんですが、この人が一番訴えている症状を聞いて、「鑑別診断」と言って、自分の頭の中で当てはまる症状を列挙して、それに応じた薬を処方します。

山下さん

なぜ医師の診察よりもAIの方が良いと思われるのですか?

斉藤ドクター

もちろん医者は間違った診断をしないように日頃から努力しています。しかし、人間なので間違いは避けられません。自らの体調が悪かったり、症例が少なかったり、知識の個人差にもよります。
だから、AIが診察したほうが速くて正確だと思いますね。

山下さん

なるほど。病院に行ったときに聞かれる「発熱、血圧、いつから、どんな」などを入力すると診察結果が出るようになったらスピードも上がるし、患者さんも待たなくて良いからいいですね。

斉藤ドクター

その通りです。医師という職種でみた場合、AIの普及によって解消されるのは地方での医師不足です。
今は1人の医者の負担が大きい事が問題になっています。診療だけではなくて、申請書や診断書を書いたりするような実務もたくさんあるんですよね。

山下さん

ゴリラクリニックでも電子カルテを導入していますが、入力作業などは看護師・医師が作業していますからね。

斉藤ドクター

医師じゃなくてもできる作業をAIに肩代わりしてもらうというのは、絶対に、しかもなるべく早く実現する必要があります。

人しか出来ない仕事を効率よくするために

山下さん

医者が「何をどこまでやる」という定義みたいなものは、昔からあるんですか。

斉藤ドクター

もちろんあります。法律上、医者じゃないとできない仕事が決められています。
それと、医療の世界は古い体質が残っていて、新しいシステムが導入されたり、仕事の捉え方が変わるのに時間がかかると感じています。

山下さん

人の命に関わるのが医療だから、AIの活用も確実に安全が確認されるまで時間がかかりそうですね。

斉藤ドクター

僕自身も行っていることですが、患者さんの家に行く訪問診療。特に高齢者の方は薬を飲み忘れていたとか習慣化されてなかったという話もよくあるんです。
それも、AIがお知らせしてくれるとか、ちゃんと飲んでいるかどうかを把握するだけでも違うと思います。

山下さん

在宅医療というものですよね。国も推進していると聞いたことがあります。医師にかかる負担がとても大きくなりそうですね。

斉藤ドクター

よくご存知ですね。都心部になると「この病院のこの先生でないと治せない症状」のように専門性が高くなることが多いです。
そうなると、その先生1人あたりの負担が増えてくるので、診断だけでもAIがやってくれれば、先生は治療に専念できる。人間よりもAIのほうが正確な診断ができたり、患者の画像を見落とさず指摘できたりするので。

山下さん

それも、AIが得意とする画像処理力と蓄積データ解析を活かした診断ということですね。

斉藤ドクター

そうです。ディ−プランニング(深層学習)で、正常な状態と病気の状態を学習すれば、「ここが病気」というのが一瞬で分かってしまうわけです。

山下さん

診察の中でも医師の観察眼や触診というのはAIで判断は難しいのではないですか?

斉藤ドクター

確かに、医師は患者さんのパッと見の雰囲気というのも重要視しています。
ただそういうのも、学習すればできると思います。声の感じとか、体温、脈拍などもモニタリングできます。

山下さん

そういえば、海外で登山中に転落事故で怪我した人がApple Watchの自動通報システムで助かった、という記事がありました。あれも衝撃や脈拍などをモニタリングしてたから機能したみたいですね。

斉藤ドクター

スマートウォッチなどのデバイスで健康状態が記録されていたら、AIはかなり正確な診断ができると思います。
明らかに異常があったというときだけ医者が対応して、なんとなく調子悪いという場合、むしろAIのほうが判断しやすいと思いますよ。

山下さん

お医者さんにしかできないことというのは?

斉藤ドクター

1つは、やはり人間対人間という部分。特に精神科だと、話を聞いてもらうというだけでいいという患者さんもいて、実際の診断に至らなくても、話を聞いてあげて質問に答えたらちょっと良くなったという人もいるので。「医者に診てもらえた」という安心感ですね。

山下さん

ああ、そうか。具合悪くて不安になっても、病院で医師に「風邪ですね」と言われると「なんだ風邪か」と気が楽になりますよね。

斉藤ドクター

それも医師の大切な仕事だと思っています。もっと時代が進めば、治療の一部とか、簡単な手術までAIがやってくれるかもしれない。少なくとも当直明けの疲れた医者が手術するよりは、安定した結果が得られるし医療ミスは減ると思います。

山下さん

人間の体は、みんなほぼ同じ造りだと思いますが、それでも若干の誤差というのもある。
同様に疾患の内容も微妙に異なるような気がしますが、どうでしょう?

技術が進歩し、機械でできることが極端に増えた

斉藤ドクター

一般的な病院で多く目にする手術の場合は、最初にどこを切り開いて、どの血管を抑えて、という「術式」が決まってるんです。
体の構造には個人差があって、稀に左右が反転してるとか、血管がなかったりというケ−スもあります。ただそういうのは、MRIやMRAなどの3Dでの画像解析でわかるので、もともとの術式に合わなくても、それに則ったやり方でできるんです。

山下さん

MRAは自分もやったことがありますが、確かに最近の画像解析技術はすごいですね。

斉藤ドクター

もちろん疾患によっては、その医者の腕がいいからできる手術もありますが、一般的な病気の場合は、ロボットでも十分対応できると思います。手術だけではなく、技術を必要とする検査も結構あるんですよ。

山下さん

検査ですか。採血とか注射器を使うような検査ですか?

斎藤ドクター

そうですね。腰のところから針を指して脊髄液を採取する方法があるんですが、高齢の方とか、骨が変形している人だとかなりやりづらいんです。
それも3Dの画像でロボットがやってくれたら、医者の負担は軽減されますよね。

斎藤ドクター

あと、介護の問題でもそうです。自分で動けない患者を病院や施設に運ぶのに、人間がやると人手がかかったり腰痛になったりとリスクがある。
そうした移動だけでもロボットが手伝ってくれたら、世の中変わると思います。

山下さん

なるほど。

斎藤ドクター

ゴリラクリニックの行っている、保険適用外の美容診療についてもそうです。今でもアプリなどでありますが、「この部分を治せばこうなりますよ」という、施術後の予想画像を提示する作業などはAIで、できるようになるでしょうね。

山下さん

それはすぐにでも開発されそうですね。スマホアプリですらリアルタイムで画像の加工が出来てしまいますし。

斉藤ドクター

同時に、実際の施術・治療行為についても、大きな手術を伴うものは少ないので、大部分はロボットでより安全に行えると思います。
たとえば、ヒアルロン酸を注入する場合。ほうれい線の直下というのは動脈が走ってるので、塞栓(血管を塞ぐ)のリスクが高い。
だから、画像を見て、どのくらいの浅さで針を刺せばいいかというのは、ロボットがやったほうが良くて、そのほうがリスクもなく、医者ごとの技術の差異もない、均一な治療ができます。

山下さん

医療ロボットと言うとすでに、「ダヴィンチ」という内視鏡支援ロボットがありますね。

斉藤ドクター

そうですね。あれは腕が何本もありますけど、簡単な施術の場合は1本か2本あれば十分で。患者さんのどこに目があって鼻があってというのはカメラがあるので、それでモニタ−しながら。たぶん、人間がやるよりも速くできると思いますよ。

医師を目指しても、技術の進歩によっては想定できない治療になる?

山下さん

ここまで、AIの功罪の「功」の部分について話してきましたが、逆に「罪」の部分についてはいかがでしょうか。

斉藤ドクター

医療の場合、現実に医師の数が足りないし、1人の患者さんにかけられる時間も少ないので、患者側に立ってみればマイナスの部分は考えにくいんです。
ただし、これからAIが当たり前の社会になったときに、医者を目指す人たちが思い描いている理想の医者像と、実際医者になった後の現実にギャップが出てきてしまうというのはあると思いますね。

山下さん

たとえばAIで診断するときに、AとBという2つの選択肢があって、どちらもフィフティ・フィフティだと。その場合にどちらかをジャッジしたとして、その結果の責任は誰が負うのか。医者なのか、AIを導入した病院なのか、AIを作った会社なのかという問題もありますね。

斉藤ドクター

AIになっても、しばらくは、責任の所在が”医者”というのは変わらないでしょう。
AIが「これとこれ」と言っても、最終的に決断を下すのは人間の仕事になるので、そこは患者さんにも安心していただけると思います。

山下さん

デザインであれば、自分で手間ひまをかけ、いろいろ苦労して生み出したものには、やっぱり愛着があるので。
AIの導入によって時間もお金も省コスト化される反面、便利になってしまうがゆえに、そうしたクリエイトする喜びや充実感がなくなってしまうことになるので。それは悲しいなあという気もします。

斉藤ドクター

アーティストやクリエイターの作品って、その人の作風も変化も含めてファンになっていること多いですよね。
それが「みんなが好きな最適解」を疲れもスランプも無く量産されたら、それを評価する「人間」はどう感じるか難しいですね。

山下さん

そうだと思います。クリエイティブ領域でも医療分野でも、人が「人間らしさ」を求める部分が無くならない限り、AIに全てを任せられるということは起きないと思います。

斉藤ドクター

AIの進化は良いことと話してきましたが、もちろん「失業したくない!」と思ってますからね(笑)

まとめ

これまでは人だけが行っていた作業は、人がやらなくても良いようになってきています。
つまり、人だけができる作業に多くの時間を費やすことができるようになったとも捉えることが出来ます。

人がやらなくても良いことは、AIに任せ、自分にしかできないことを磨くことが、シンギュラリティー(技術的特異点)に対する心構えになるのかもしれません。

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