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元自衛官の女性から学ぶ、組織で働くことの厳しさと「なりたい自分」を目指すことの大切さ

私たち 2019.07.10 by G-lip E 編集部

「組織の舵を取る人ってどんな考えをしているのだろう」そんな想いから、高校卒業と同時に航空自衛隊への入隊を決め、まだ18歳だった彼女は、地元青森から遠く離れた沖縄で、空の防人となった。

彼女の名前は、小比類巻千早(こひるいまきちはや)さん。

そして、彼女はなぜ、国の安全を保つ仕事から、美容クリニックのバックオフィスで働くことを選んだのか。

男性割合が高い自衛隊にも女性隊員が増えているとはいえ、女性自衛官(航空自衛隊)の採用率は15%~20%という狭き門であり、民間企業の有効求人倍率は1倍以上をキープ。まさに「売り手市場」の現在においても、選ばれた人間しか携わることが出来ない国防の世界。

その世界へ、高校卒業と同時に飛び込んだという彼女は、「最も厳しい組織」で何を学び、どこを目指しているのか。

女性としては、珍しいキャリアを歩む彼女には、「挑戦することの大切さ」や「 接遇と身だしなみ」に至るまで、広く語って頂きました。

〈インタビュアー:イノウエ〉

飛び込んだ自衛隊、抑えられなかったその興味とは

イノウエ

今日は、お忙しいところありがとうございます。
よろしくお願いします。

小比類巻さん

私、取材に慣れていないのですが、お願いします!

イノウエ

こちらこそ、よろしくお願いします!
とても興味深い経歴をお持ちなので、本日はぜひお話を伺わせてください。
その前に、「小比類巻さん」のお名前が上手く言えなくて、千早さんとお呼びさせていただきます(笑)
まず、千早さんが自衛官になった理由をお伺いしてもいいですか?

小比類巻さん

千早で良いですよ(笑)
ちょうど中学生になった頃からテレビのニュースをよく観る様になりました。 様々なニュースが目に映るなか、世界情勢が気になる様になり、そんな時に「日本はどうなんだろう?国防って未知な世界だな」 と考える様になりました。
そして、その大きな“組織の舵取りをする人”は、「どんな思考をしているんだろう」という興味が沸いたことがきっかけです。

イノウエ

なるほど、大きな組織の舵取りをする人の思考を知るために、自衛官になることを目指したのですね。

小比類巻さん

そうですね。
湧き上がった興味をそこで留めておくことが出来ずに、その世界に飛び込んでしまおう と入隊を決めました。

イノウエ

18歳で自衛官を目指す決断をしたのがすごいです!
ただ、男性でも根を上げることがある自衛隊に入ることに不安は無かったんですか?

小比類巻さん

いえ、それが不安はありませんでした。
私、実は猪突猛進の性格で(笑) 両親も全く反対せず背中を押してくれました。

小比類巻 千早(こひるいまき ちはや)
1993年青森県生まれ。高校卒業後、航空自衛隊に入隊。那覇基地に配属され、7年間を自衛官として過ごし、2018年12月に退職。学生時代はバレーボール部、ソフトボール部の体育会系で、休日は一人でも観戦するほどの野球好き。推しは埼玉西武ライオンズ源田壮亮選手。

化粧はハタチから“習慣が変われば人格が変わる”

イノウエ

これは、僕の個人的なイメージですけど、自衛隊って公務員ですし、規則も厳しいんじゃないんですか?

小比類巻さん

自衛隊は規律を重んじる組織ですので規則やルールが徹底されています。
ただ、毎日のベッドメイクならまだしも編上靴(戦闘靴:ブーツ)の手入れなんて経験がある筈もありません。
ただ、慣れてしまえば当たり前となりました。

イノウエ

普通の人でも会社で習うことではないですよ。
身だしなみを整えることも含めて仕事ってことですよね。
今でもその習慣は続いてますか?

小比類巻さん

制服のアイロンがけが、習慣的に身に付いていますが、実は苦手なんです(笑)
ただ、靴磨きが好きでしたので、今でも靴の手入れは続けています。
自衛隊では全てのモノは限られた予算の中で調達されていますので、なるべくモノを長く大切に使う習慣が残っていますね。

イノウエ

「靴は消耗品」として扱う方もいる中で素晴らしいですね。
確かに自衛隊員さんの足元っていつもピカピカのブーツのイメージです。

小比類巻さん

訓練後は、当然汚れますが、それを綺麗にするのも仕事の一貫です。
教官に「お前、靴磨きが上手くなったな」と褒めて頂けたのが嬉しくて、続けていく内に好きになりました(笑)

イノウエ

習慣が変われば人格が変わる、身だしなみは人格の現れってことですね。
ところで、素朴な疑問なんですけど、女性隊員の方は普段から化粧をしているんですか?

小比類巻さん

私は会計職として勤務していたので、銀行や公共施設に出納業務に出向くことがあり、最低限の化粧はしていました。
でも実は、仕事の時の 化粧は20歳までしたことがなかったんですよ(笑)

イノウエ

今時の20歳の女の子は、みんな化粧していると思いますけど(笑)

小比類巻さん

そうですよね。あまり気にするタイプではなかったので。
でも、上官に 「化粧くらいしなさい」とご指摘頂いてからは頑張っていました(笑)

イノウエ

民間企業の場合、最低限のメイクをすることも含めて“身だしなみ”としていますからね。

小比類巻さん

やっぱりそうですよね。銀行などに行った時、周りからの視線も気になりますし、制服を着ていたので化粧をしていた方が、 社会人として当然という認識もありましたし、見た目の印象も良いよねってことで(笑)

イノウエ

今は、民間企業で美容系ということは、ファッションやネイルなども楽しんでますか?

小比類巻さん

せっかくネイルしてもらっても、すぐに落としてしまったり、邪魔に感じてしまうんです。
なので、恐らく向いていない性格なんだと思っています。
自衛隊員の頃は、作業服(迷彩服)や制服で仕事をしていたので、ビジネスファッションの様な洋服を上手に着こなしている人を見ると羨ましい気持ちになることがありますよ。

イノウエ

男性と女性とでは気にするポイントが違うことも多いですが、大事なことは一緒なので、悩むところも似ていますね。

接遇という心遣いと持て成しの所作

イノウエ

ところで、7年務めた自衛隊を辞めて、民間企業で働きたいと思ったのはなぜですか?

小比類巻さん

「組織の舵を取る人の思考を知りたい」という目的から自衛官として入隊をしたものの、7年経ってもその目的を果たすどころか、壁は果てしなく高く、ゴールなんて見ることが出来ませんでした。

イノウエ

調べたのですが、約22万人の組織(平成30年度版防衛白書より)ですもんね。
企業として考えたら、日本国内でトップ10に入る社員数を誇る大企業ですよ。

小比類巻さん

とても多いですよね。そんなに簡単なことではないと断念しました。
一方で、自衛官としての活動を通じて、色々と学ぶ機会もあり 考え方が変化してきたということも理由の一つです。

イノウエ

仕事を通じて 「意識が変わった」という人も多いですけど、千早さんの場合はどんな変化があったのでしょうか?

小比類巻さん

司令部の副官付きを担当したことで 接遇を学ばせて頂いたことから大きな変化が生まれました。
「接遇とは相手には何も感じさせない」ということを指導してもらい、小さくさりげない 心遣いの大切さを学びました。
また、基地内には部活動がありましたので、そこから学んだことも大きいです。

イノウエ

自衛隊って部活があるんですか?初めて聞きました。

小比類巻さん

もちろん 活動は勤務時間外ですよ(笑)
運動部だと種目ごとの大会も開催されます。 私は、茶道に興味があり始めたのですが、お茶を入れる時の手の角度であったり、手の添え方など、細かいところまで丁寧に教えて頂きました。

イノウエ

茶道から学ぶことは多そうですね。

小比類巻さん

茶道には、日本古来の美しい持て成しの「所作」 が凝縮されています。
とても素敵なもので、「接遇という心遣いと持て成しの所作」を身に付けたいと思う様になりました。

イノウエ

なんだか自衛隊って楽しそうに思えてきました。

小比類巻さん

会計職と言えども、定期的に訓練はありますし、昇任試験には体力検定も含まれるので、トレーニングもしなければなりませんから大変ですよ(笑)
基本的には 24時間勤務ですし。

イノウエ

確かに、夜は国防お休みですって訳にはいかないですもんね。
すみません。

自衛隊経験の自負、そして諦めない心

イノウエ

千早さんが「興味を持ったらやってみる」という性格なのは分かりましたけど、初めての転職活動はどうでしたか?

小比類巻さん

右も左も分からなくて、転職サイトへの登録の方法すらわかりませんでした。
エージェントって何ですか?みたいな(笑)

イノウエ

僕も異業種からの転職経験をしましたが、本当に分からないですよね。

小比類巻さん

私の経歴上、高校卒業と同時に18歳で入隊しているので、履歴書に載る最終学歴は「高卒」 ということになってしまいます。
学歴や職務経歴が影響しているのか、書類審査の通過率が悪く、面接に至らない結果で終わってしまう企業が非常に多かったんですね。

イノウエ

そうなんですか?千早さんは若いですし、自衛隊経験は転職にも有利だと思っていました。
書類審査も通らないと心が折れそうになりますよね?

小比類巻さん

職歴の影響は気のせいなのかも知れませんが、学歴の影響は強く感じました。
ただ、自分はプライドを持って仕事に取り組んできた自負もありますし、猪突猛進の性格もあって決して諦めることはありませんでした。

イノウエ

どんな仕事でも、真剣に取り組んできた仕事なら自信に繋がりますし、決して無駄な経験にはならないですよね。

小比類巻さん

これは一般企業で働く方も同じだと思いますが、自衛隊という組織においても部隊によって、隊員の任務や訓練の厳しさが異なります。
ただ、共通しているのは、全員がプライドを持って仕事をしているということです。
それは、とても大切なことだと学びました。他にもたくさんの学びを得た自衛隊経験は、私の人生において、決して無駄ではなかったと思っています。

目指すのは、組織のパイプ役

イノウエ

現在は、美容クリニックのバックオフィススタッフとして勤務されていますが、接遇や所作の学びを活かしきれていないんじゃないですか?

小比類巻さん

そうですね。
応募時は、クリニックの受付業務を志望していたので「受付・カウンセラー」として内定を頂くことができました。
ただ、面接時に「運営本部で働いてみませんか?」という提案を頂くことになりました。
ですが、本来の転職の目的とは異なる申し入れ ということもありまして、一度はお断りさせて頂きました。

イノウエ

急に信念の無い人になったのかと勘違いするところでした(笑)

小比類巻さん

一度はお断りしたのですが、せっかくご提案頂いたチャンスでもあると考えました。
転職活動をしながらも「組織を動かす人の思考を知りたい」 という思いは、ずっと残っていましたので、後日、改めてご提案をお受けしようと決めました。

イノウエ

「なりたい自分」 を目指すという、「自分がどうなりたいか」を考えたことでキャリアを選んだんですね。

小比類巻さん

バックオフィスといっても、カウンセラーさんや看護師さんと関わることが多いので、接遇や所作は、仕事を通じ、プロの皆さんからも沢山学ばせていただいています。
ですので、見方を変えると一石二鳥という結論に至りました。

イノウエ

確かに、キャリアチェンジの際に視点を変えてみるというのは、大切かもしれませんね。
実際に働いてみて、「組織を動かす人の思考」は見えてきましたか?

小比類巻さん

初めての民間企業なので、分からないことがまだまだ沢山あります。
ただ、実際に組織を動かす人との距離が近いので、とても勉強になっていると感じています。

イノウエ

最後に、今後どんな役割を担っていきたいと思っていますか?

小比類巻さん

役割というか、組織の良いパイプ役になりたいですね。
感謝されたい、ですとか、人の上に立ちたいという気持ちは特別ありません。もちろん、感謝されたら嬉しいのですけど。そういうマインドではないんです。
どの業種でも、本部(バックオフィス)と現場という立ち位置は存在していると思います。それは自衛官の時も同じで、それぞれに考え方があり、それぞれのプライドがある。
私はそのパイプ役というか様々なポジション同士の架け橋となり、中立的な立場で組織を良いものにしていきたいと考えています。

イノウエ

色んなお話を聞くなかで、自衛官としてプライドを持って働いた経験、その仕事から身に付いた習慣が作る価値観がとても印象深く、社会人男性の一人としても見習う部分が沢山ありました。
今日はありがとうございました。

小比類巻さん

こちらこそ、ありがとうございました。

まとめ

取材を終えて、元自衛官というキャリアを持つ彼女から感じたことは、自分がなりたい理想を追い求めること、その姿勢と信念を突き通すことの大切さ。

環境は変わっても、「自分がどうなりたいか」その思いは、心の中にあるものです。そんな理想へと近づくためには様々な方法があり、転職はその手段であったのだと思います。

今の環境が、自身が追い求める理想に適しているのか?時には立ち止まり、振り返ってみる時間があると、ちょっとした変化が生まれるかもしれません。

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